EO イーオー(2022)
- ラーチャえだまめ

- 2023年5月14日
- 読了時間: 5分

【原題】EO
【監督】イエジー・スコリモフスキ
【出演】サンドラ・ドルジマルスカ ロレンツォ・ズルゾロ マテウシュ・コシチュキェヴィチほか
【あらすじ】
愁いを帯びたまなざしと溢れる好奇心を持つ灰色のロバ・EOは、心優しい女性カサンドラと共にサーカスで幸せに暮らしていた。しかしサーカス団を離れることを余儀なくされ、ポーランドからイタリアへと放浪の旅に出る。その道中で遭遇したサッカーチームや若いイタリア人司祭、伯爵未亡人らさまざまな善人や悪人との出会いを通し、EOは人間社会の温かさや不条理さを経験していく。(映画.COMより)
【感想(ネタバレなし)】

『キミの瞳にレボリューション』
どーもどーもラーチャえだまめです。早速ですが本日はコチラの映画を拝見させて頂きました
【EO】……!!!「イィーオォーーー!!!」……と聞いて怪物フランチェンを思い出されたエンタ世代の皆さまに朗報です今年はあのディズニー普及の名作“「くまのプーさん」とは全く関係のない2作が公開されてしまう”という!?うち一つは羽生結弦も絶句する「what to do…」と100万回頭を悩ませても理解出来ないホラー映画、もう一つは今日ご紹介するコチラ「EO」。正確には“イーオー”ですが、ズバリそれを指しているのは100エイカーの森に登場する住人の一人、イーヨー=つまりロバ!今作の主役は「ロ・バ」でございます!?

本作はカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した2022年製作のポーランド映画、そもそもイヌ=ポチとネーミングするのと同じく世界共通認識としてロバ=イーヨーの愛称で呼ばれている背景としてプーさんに登場するキャラクターから来ているワケですが、プーさんの原作国イギリスではロバの鳴き声を「eeyore」と表すことからそう名付けられたそうですね。それにしてもロバを主役にした映画…??ちょっと前にやったモノクロの“ブタ映画”(ニコラスケイジの方じゃないよ)のような、ロバの生態から何からドキュメンタリーチックな映画なのかな、と思っていたらですよ、しっかりとした「物語」がそこには存在していた、実際6頭のロバを起用して撮影に望んだそうですが「セリフなんてありゃしない」だってロバ!ロバだもの!?なのに主人公のロバ“EO”が見つめる“眼差し”が全てを語っているかのようなEOの「黒い瞳」の中に反射して映し出される

人間って「野蛮」だなー
…そんなことを考えさせられてしまう、深い映画だったんですねぇ。
EOはポーランドのサーカス団で若い娘とバディを組みショーに明け暮れる日々をおくっていたのですが、ある時「動物をショーの見世物の道具として扱うのは虐待だ!」と動物愛護団体の反対運動によりサーカス団から引き離されてしまい……そこから始まるEOの「当てのない珍道中」……

と言うとなんだか楽しそうな響きですが実際はそんなウキウキワクワクするような展開でもないんですね。道中様々な“出会い”がEOを待っている。ロバってピノキオでも「怠け者」の例えにされたり、世界のことわざでもあまり良いイメージで描かれない。我々の先祖はロバに親でも蹴飛ばされたんか?いやしかし野生育ちの純粋無垢なEOに“罪はない”。ただテクテク歩いて流れ着いただけなのに、そこにいた人との出会いでEOの運命がどんどん変えられていく。出会う人みんながEOに“優しいわけじゃない”。平然と暴力を振るってくる者もいる。EOが何もしていないのに、だ。我々視聴者はそんなEOの“目線”に立ち、EOの黒い瞳の中に映る「優しさと愚かさを兼ね備えた人間の姿」を目の当たりにする。人を通して人を見るとのは違い、キレイな黒い瞳を持つロバ、という“罪なき者”を通して人を見る、という一切のフィルターを介さず見せることで、より人間の“本質”が際立って見えるというか、動物を主役にした意図がここにあるのかなと。
今作はスピルバーグの「戦火の馬」みたいな人間と動物のサクセスストーリー……なんてファンタジーな話ではなく、お互い関わり合いはあってもEOの本音はきっと「頼むからもう関わらないでくれ」の一言だったんじゃないかと、勝手に想像を膨らませて見ておりました。前回ご紹介した「ガーディアンズ〜」と公開時期といい色々被る要素があると思いました。「動物虐待」というメッセージ。自然の生き物に罪はない。私欲に塗れた人間の愚かな行いの被害者でしかないのだと___現社会の自然への冒涜を強く訴えかけている、そんな映画です。

御年85歳イエジー・スコリモフスキ監督は俳優としても活躍し「アベンジャーズ 」とかいうゴリゴリのハリウッド映画にも出ていたとはこれまた驚き。あ、ちょびっとだけだけどフランスの大女優イザベル・ユペールがちゃっかり出演しているのも驚きでしたねー。
ちなみに人間の狂気がさらにマシマシになったのが本日2本目に見る「食人族」ですか?なんか複雑〜!!
(次回:真の野蛮人は誰だ!?密林のジャングルに潜む驚愕の原住民の謎を追え!?)
【感想(ネタバレ)】
思い返せば元はと言えば「動物愛護を生業とする」団体からサーカスの飼い主と引き離されたのが全てのきっかけだったっけ。自分たちが訴えかけたその後のアフターフォローは考えず「カタチ」だけで動物たちを「救った気でいる」愛護団体も、言ってしまえばただの「私欲」塗れの人間と言うことか。事実彼らによってEOは強制的に流浪の旅をさせられ挙句あのような結末を迎えてしまうのだから……。動物たちにとって無責任な「救う」ほどありがた迷惑な話はないな、と激しく痛感しました。
ラストで一瞬牛の群れを指揮する「牛使い」に転職してビシッとした勇姿……かと思いきや、彼もまた「その他大勢の食肉加工される原料」として工場の中に吸い込まれていくという……ロバってサラミの原料になってんだ。全然知らなかった。なんとなくハッピーエンドではないだろうと思っていましたが、あれならまだ車に轢かれたりダムに脚滑らせて「不運な」で済ませてあげたかったという気持ちも。あのラストは決して「不運」ではありません。「ああなるようにした」人間が起こした災い、「人災」なのですから…。




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