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ハウス・オブ・ダイナマイト(2025)


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【原題】A House of Dynamite

【監督】キャスリン・ビグロー

【出演】イドリス・エルバ レベッカ・ファーガソン ガブリエル・バッソほか

【あらすじ】

ごくありふれた一日になるはずだったある日、出所不明の一発のミサイルが突然アメリカに向けて発射される。アメリカに壊滅的な打撃を与える可能性を秘めたそのミサイルは、誰が仕組み、どこから放たれたのか。ホワイトハウスをはじめとした米国政府は混乱に陥り、タイムリミットが迫る中で、どのように対処すべきか議論が巻き起こる。(映画.COMより)




【感想(ネタバレなし)】
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『これは“SF”ではない』





最近ネットフリックスにお布施中のラーチャえだまめです。今月24日にネットフリックスで全世界配信開始の前に一部劇場で現在先行上映されているコチラ。たまーに劇場でもやるネトフリ映画。「これは絶対劇場で見なきゃでしょ」とルッソ兄弟の「グレイマン」を当時劇場で見たのですが思ったより安っぽいCGがスクリーンだとより悪目立ちすることに気づいてしまい所詮サブスク映画は家で見るのが一番なのかなー、なんてことも思っておりました。この映画を見るまでは____。



【ハウス・オブ・ダイナマイト】。「ファイナルデッドブラッド」のウラでもう一つ劇場公開に踏み切った作品が。今少しでもこの映画のことを気になっているアナタに「劇場鑑賞を強くオヌヌメしたい。」そんな今日ご紹介する作品は、2009年アカデミー受賞作「ハート・ロッカー」で当時史上初の女性監督による監督賞受賞の快挙も打ち立てたキャスリン・ビグロー“政治スリラー”最新作。と聞いただけでもう既にファンならば聞き捨てならない状況かとは思いますが??既に今年のヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門で上映され高い評価を得たというからもだいぶ“硬い”作品なのでありますが……


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今日もいつもの1日になるはずだった___。どこから飛んできたかもわからない身元不明の核ミサイルが突然“あと数十分でシカゴに落下”するという現実を突きつけられたアメリカ___まぁ北朝鮮とかよく弾道ミサイル飛ばしてるじゃないですか。過去レーダーが雲に反射した光をミサイルと間違えたケースだってある。まぁまぁとりあえず警戒くらいはしておこう……アメリカ軍事基地司令部と政府上層部は警戒しながらまずはミサイルの様子を伺う。



ミサイルの角度が「傾斜から水平になる」これ、業界の「キラーワード」らしい。要は傾斜から水平になる=「爆撃地」が定められている=故意に狙って撃ってるってことになるわけですよ。明らかな「攻撃」ってこと。ミサイルの角度が水平になった途端に一気に場の空気が凍りつく。現場に緊張感が走る。いや見てるこっちもずっとソワソワしっぱなしだよおー!!



本作はSFなしのゴリゴリ「実用的」被災時シミュレーションを見ているような徹底した「リアリズム」の中で、もし現実にこのようなことが起きたらアメリカ合衆国はどう対処するのか、また「核がある限り、この世界はもう平和ではない」と冒頭からはっきりと“断言”する、富士山ばりにいつ起爆するかもわからないアメリカのみならず今や世界が“爆弾を積んだ家”と化しているという現実を?情け容赦なしに描き切った極限の政治スリラーが展開されてしまうのです。ミサイルを撃ってきた“敵国”はどこか。報復か守りに入るか。中国、ロシアの動向などなど……様々な課題にどう向き合っていくか。たった1発のミサイルで天変地異レベルの世界の情勢が今まさに変わろうとしている、その瞬間にまるで自分もその場の一人として立ち会っているかのような臨場感を味わえる。


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さらに演技上手な豪華絢爛な俳優陣の活躍が物語にさらなる“リアリティ”を持たせていて、レベッカ・ファーガソン演じる海軍大佐をはじめ、アンソニー・ラモスジャレッド・ハリスジェイソン・クラーク、現在公開中の「トロン・アレス」のグレタ・リーや売れっ子女優ケイトリン・デヴァーまで(チョイ役ですが)そしてオオトリはアメリカ合衆国大統領イドリス・エルバ!!今日は相方がジョン・シナじゃないので暴れませんいやいやそんな豪華俳優陣による現実を模したドラマはソダーバーグの「コンテイジョン」×3つの異なる視点でそれぞれ描かれるリアルタイム群像劇は「バンテージ・ポイント」を彷彿とさせる。そして両者とも「ずっと緊迫」が続くという、その2つを掛け合わせたらそりゃ……!!終わった後のグッタリ度は割と高し。しかし極限の緊迫感だけをひたすら全身から浴びせられる感覚は劇場でなければ体験できないだろう。緊迫に“一時停止”など効かないのだから……。



シミュレーション的映画と言いましが「シン・ゴジラ」みたく何言ってるかよくわかんねー専門用語がバンバン飛び交いながらスマートに対処しようとする労働者たちのカッコ良さ、もありますがそれも前半だけ。たった数分のうちに最悪の事態にどんどん突入していく状況に最終的に大統領ですら「コトバを失ってしまう」という絶望に立たされた人間を描き、国防省のエリートリーマンだろうが大統領だろうが誰もが絶望に立たされた時、最後は役職や立場を超えた皆が同じひとりの「人」として愛する者たちにただ「愛している」と言葉を告げたりすがろうとする、人間のサガのようなものを見させられたというか。



ラストは「で、結局どっちなんだいッ!!」な少し投げやりにも見えますが、最後の決断まで現実の政治と結びつける必要はないのかなと。本作は決断に至るまでの「過程」を描いた映画であり、ある意味“結末”が似合わない映画かもしれません。

コメント


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