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テレビの中に入りたい(2024)

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【原題】I Saw the TV Glow

【監督】ジェーン・シェーンブルン

【出演】ジャスティス・スミス ジャック・ヘブン リーンジー・ジョーダンほか

【あらすじ】

冴えない毎日を過ごすティーンエイジャーのオーウェンにとって、毎週土曜日の22時30分から放送される謎めいたテレビ番組「ピンク・オペーク」は、生きづらい現実を忘れさせてくれる唯一の居場所だった。オーウェンは同じくこの番組に夢中なマディとともに、番組の登場人物と自分たちを重ね合わせるようになっていく。しかしある日、マディはオーウェンの前から姿を消してしまう。ひとり残されたオーウェンは、自分はいったい何者なのか、知りたい気持ちとそれを知ることの怖さとの間で身動きが取れないまま、時間だけが過ぎていく。(映画.COMより)


【感想(ネタバレなし)】
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『マルコとポーロを分けたがるのは万国共通だった件』





皆さん最強の一人呑みってどこだと思います?私はしんぱち食堂だと思うんですよねー。え定食屋ですよねって?いやいや席代お通し代なしアサヒの生中150円ネギトロ90円冷奴60円!このご時世にありえ値ぇ安さでサクッと呑みにめちゃくちゃ使え












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ママああああああああああ!!!!(泣)





と、言うわけで本日はコチラの映画を拝見させて頂きました



【テレビの中に入りたい】!!!……いいえ!終了!!みんな大好き“A24”スタジオから今年度の摩訶不思議イミフワールド全開な?コーンヘッズより先端が「尖った」作品をご紹介……していきなりですが相変わらず本作も例に倣って「かなり人を選ぶ」作品であることをまずお伝えしなければなりません。はっきり言って合わない人にはとことんウケが悪い家賃4万の吉祥寺物件並みに極狭なターゲット層。しかし刺激されたが最期という?A24の新作、というネームバリューもあるんだろうけど劇場売店の他にも只今代官山でポップアップショップが開かれたり公開前から宣伝されていたコチラ、私も何の気なしに行った下北沢のヴィレバンで関連グッズやフライヤーが置いてあって、正直見る気なかったけど途端に気になってすぐさま渋谷に移動して(なんで下北でやってないんだ泣)鑑賞してしまった、そんなヴィレバンのみならず「サブカル」好きに特にオヌヌメ、いや幼少期に見ていた戦隊ヒーローもののDVD BOXを今になって大人買いしたそこのアナタ、あるいは昔友達とやったレトロゲームに遊戯王カード……今やまんだらけで漁る日々を送る「オタク」共よ。それに触れている瞬間だけ「あの頃」の童心キッズに戻れる。。。。そんな「大きなオトモダチ」を?











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鋭利なナイフでザクザクブッ刺すような映画




だったんですねー。









1996年。“深夜22時以降TV禁止”の家族ルールに縛られいつもTVコマーシャルでしか見たことがなかった、深夜22時“半”から放送の「ピンク・オペーク」というクトゥルフ系(?)ドラマが気になって仕方がなかった生粋のTV少年“オーウェン”(中1)。ある日同じ学校で年上の“マディ”(高1)と出会い彼女が熱烈な番組のファンであることを知ったオーウェンは勇気を振り絞りマディの自宅で一緒にリアタイで番組を視聴したいと懇願するのですが……。


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深夜にブラウン管から流れる番組を見る。今や絶滅したエモい文化がやっぱり良かったことを再認識させられる、おぼろげな記憶ながら96年というギリVHS全盛期くらいの平成時代を生きた者として。本作はとにかく「美術」なシーン野村萬斎でどれもポストカードにしたくなるくらいにいいシーンがあるんだけど、特に印象的なのは学校の廊下を歩くオーウェンの長回しのバックショット。そこで挿入歌が流れて完全に「MV」風なんだけど、そこからさらに画面に直接紫色の蛍光ペンで描いたようにマディがオーウェンに貸したVHSテープのラベルに書いた字が次々出てくる、面白い演出でしたねー。他にも作品にマッチしたセンスの塊のようなインディロックの数々に「音楽映画」としても確立していて、コレは音響の良い劇場案件の映画だと思いました。



そんな前半はブラウン管から流れる紫色の蛍光色がビカビカ光り「カワイイ」「綺麗だ」と思えるくらいには俯瞰的に見れるくらいの余裕のある?年上のマディにしどろもどろになりながら彼女に対してどこか“憧れ”のような眼差しのオーウェンと、キーラ・ナイトレイとメンタリストDaiGoを足して2で割ったようなジャック・ヘヴン演じる高1でもだいぶ大人びた、いやアンニュイで時に何かに“怯える”ような姿のマディの「妄想大好き青春もの」という美しさに惹かれてしまったのだが、後半はそれが行き過ぎてもはや「あれクスリやってる?」精神“疾患”レベルでアタマがおかしくなっていく感覚というか、世界がぶっ壊れていくような?これは非常に“変”な映画だ……(汗)3年後に子役の顔がピカチュウもビックリの突然ジャスティス・スミスに変わる“異変”は置いといて


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「真っ当な」ホラーではないけどホラー“っぽいシーン”とか、ブラウン管に首突っ込んだり“アジの開き”とかこれ絶対「ビデオドローム」の影響も受けてるでしょな「ボディホラー」要素も。「ピンク・オペーク」という番組そのものがちょっと“異次元の存在”で、きっと“本当”の番組は“こんな番組じゃなかった”んだろうなーと想像できる。この感覚は深夜番組に限らず子どもの頃うっすら記憶にこびりつく「不気味だけど何故か惹きつけられたトラウマ番組」を大人になって偶然どこかで見直したら「思ってたのと全然違う!」なんで何十年もトラウマになっていたんだ?と首を傾げる感覚だなと。しかし見方を変えればたとえ同じ作品でも「別物」だと言えませんか?あの時見たものは確かに“自分の中”に存在していた、という意味で。オーウェンとマディにとってそれはただの子供向け(?)番組ではなく“現実逃避の逃げ道”で、見るもの全てが美しくそして時に恐ろしいものとして目に映っていたのです。



何かに依存するのに年齢は関係ない。辛い現実から逃げ出すようにテレビ画面の向こう側の世界にのめり込むオーウェンとマディ。そしてその向こう側の世界と現実が混じり合い、向こう側の世界こそが「正」で現実だと思っていた世界が「偽」なのでは?とさらに深く入り込むようになる。現実逃避は自分を救う薬にもなるし同時に毒にもなり得る。この二面性を理解するには2人はあまりに“純粋”過ぎた。そして現実はそんな純粋な心をもつ者にも容赦なく襲いかかってくる。


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最初見終わった瞬間の評価は「は何これ?」呆気に取られちゃって。個人的スコアもかなり“低かった”。いやーヘナチョコなワケワカメな映画見て脳がふやけちまったぜ〜乾燥ワカメみたいになッ!!……まぁそんなくだらないことを脳内再生しながら帰路の途中に内容を噛み砕いて飲み込んで「これは“誰”を描いた映画か」と考えた時、少なくとも本作は「こちら側の味方」のような気がして、妙な親近感と温もりを感じたのです。そうこれは「我々」に向けられた映画なのではないかと……。



本作で描かれるのは「ウチなる“マイノリティ”の解放」。本作は自身がクィアであることを周りにカミングアウトした時に感じた衝動のまま本作のシナリオを書き上げた新人ジェーン・シェーンブルン監督の体験そのものを描いているんですよねー。けど確かに(そういえば)マディはトランスジェンダーの役ではあるんですけど、でもトランスジェンダーの映画であるとは全く思わなかったし、その事実を知った上でもトランスジェンダーだけを描いた映画ではない。マイノリティとは少数派、社会的に不利な立場に置かれるという意味。本作を見に来た観客の半分以上はおそらく映画好き、映画オタクではないだろうか?この「オタク」も立派なマイノリティの一つに数えられないだろうか?そして幼少期に周りから少なからず「変わり者」認定された経験がある者には、特にオーウェンが自分自身の移し鏡のような存在に思えるかもしれない。


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ただ本作はありのぉ〜ままのぉ〜♪姿を見せて終わり、ではなくてそこから一歩先の「現実」「残酷」に映し出すからすこぶる辛口の映画になっている。「“本当の自分”を解放しても“すぐにはハッピーエンドにはならない”」というのがまさにそう。自分を解放することで周りに影響を与えたり悲しませたりすることもある。「明日から本当の私を受け入れてね」とは、言う側は簡単だが言われた側、受け入れる側は戸惑うでしょ?だから詳しい内容は伏せますがこの物語はオーウェンの「ごめんなさい。」のセリフで終わる。自分一人が変わっても周りはそれに合わせられない、もしくは時間がかかることまでも、シェーンブルン監督は我々観客に伝えている。


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本作をセクシャルの映画だと“色”をつけるのは非常に愚かで、誰しも「本当の自分」を隠し社会からはみ出ない「普通」の人間になろうとした経験ってあるでしょう?なんとなく周りの真似事をすることが正しいことだと自分に言い聞かせ、自分の「ウチなる声」に耳を傾けなかったことが。ただそうやって生きていくと「いつか爆発」するよ?本作はそんな「マイノリティを押さえ込むなんてそんなカラダに悪いことするのやめようよ」と警告してくれている気もしました。そして周りが受け入れるには時間がかかりしばらく孤立することもあるだろう。社会がキミを見捨てることもあるだろう。けどそれは“永遠じゃない”。いつかきっと「本当の自分」を受け入れてくれる“場所”が見つかるよ、と優しく包み込んでくれるような包容力のある、そんな優しい映画だと思いました〜。

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