サブスタンス(2024)
- ラーチャえだまめ

- 5月26日
- 読了時間: 10分

【原題】The Substance
【監督】コラリー・ファルジャ
【出演】デミ・ムーア マーガレット・クアリー デニス・クエイドほか
【あらすじ】
50歳の誕生日を迎えた元人気女優のエリザベスは、容姿の衰えによって仕事が減っていくことを気に病み、若さと美しさと完璧な自分が得られるという、「サブスタンス」という違法薬品に手を出すことに。薬品を注射するやいなやエリザベスの背が破け、「スー」という若い自分が現れる。若さと美貌に加え、これまでのエリザベスの経験を持つスーは、いわばエリザベスの上位互換とも言える存在で、たちまちスターダムを駆け上がっていく。(映画.COMより)
【感想(ネタバレなし)】

『眉間のシワの数だけ美しさがある』
どーもどーもカフェで隣のおばさま方がしきりに「チンチ◯チンチ◯……」連呼していました、今日も平和ですラーチャえだまめです。早速ですが本日はコチラの映画を拝見させて頂きました
【サブスタンス】…!!!よぉー!!去年全米で公開され今年日本凱旋を首を長くして待っておりました期待作。ゴーストも手懐けるろくろを回したら世界一デミ・ムーアが主演。かつて一斉を風靡したトップ女優の一人が、言い方悪いがここ数年はスクリーンですっかり見る機会がありませんでした。しかし今作で97回アカデミー賞で主演女優賞ノミネート、82回ゴールデングローブ賞で主演女優賞受賞、という快挙を成し遂げる。かつてハリウッドの超トップスターが加齢と共に落ちぶれ“あの人は今”状態になっていた時に、自身の細胞を若返らせる謎の薬物を使い再びハリウッドでのし上がっていく様を描く、、、、という物語からして、これはなんとなくデミ・ムーア版「バード“ウーマン”」的な、彼女自身の“自虐ネタ”を逆手にとり“センス”に変えた結果再びハリウッドに返り咲いたパターンか?その絶賛された彼女の演技も注目していましたが私個人的にはそれよりも?そんなトップ女優のデミ・ムーアがなんでも“ものすごいことになってしまう”「ぼでぇえホラー」!?……いやいやこんなのもう即決でしょぉ!?……で実際どうだったか

ワンダフォーーーーーーッ!!!!!
いやーこれは「ゲテモノ度」高いなぁー!!正直「未体験ゾーン」や「カリコレ」でやるレベルの「汚さ」と愛しさと「気色悪さ」といい!?なんですかラストは「キャビンフーバー2」ですかぁ!?正直ボディホラー要素はサービスレベルかと思ったらめちゃくちゃガッツリ、いやむしろ“あのシーン”を撮りたいが故の中盤までは壮大な前座、だったのかとさえ思えてくる!?ここまで“コア層”向けの映画とは全く想像しておりませんでした!!とりあえず“クローネンバーグ親子”、“シチュアート・ゴードン”ブライアン・ユズナの“「ソサエティー」”……これらのワードでピーンときたら“観に行かないのはあまりに勿体ない”トンデモクライシスな「令和版ボディ・ホラーの大傑作」映画だったんですねぇ〜!!!
ハリウッド通りから地面に続く星のマーク。“エリザベス・スパークル”の名が刻まれたその星の前で観光客が足を止め興奮しながら記念写真を撮る。これぞ“スターの証”。しかし時は流れ次第に星を前にしても「この人誰?」とか言われ劣化して星にヒビが入っても修理されず、輝かしい功績はいつの間にか“ただの石床”となり無意識に踏まれ最終的にハンバーガーのケチャップがベチャッ……“ハリウッド・ウォーク・オブ・フェーム”を使ったOPがもう完璧に本作を表してるんだけどあまりに表現が露骨すぎる、というか包み隠さずストレートに演出するな〜と。変に抽象的にして芸術点上げようとはせず誰が見てもわかる演出にストーリーも大変わかりやすい。そしてビカビカ観客の脳天を刺激してくる風当たりの強さは嫌いじゃない。そうそう前作「リベンジ」もかなり偏った作りだった。本作はインディーズではありませんが2作目でも挑戦的な作りで、その辺もかなりワタシ好みの作品でした。

監督はパンフレットの解説を読めば一目瞭然すぎるゴリゴリのフェミニストのフランス人監督コラリー・ファルジャ。「女性はある一定の年齢を過ぎると価値を失い社会から抹消される」それが本作を作る原動力になったらしい。本作のはじまりがデミ・ムーア演じるエリザベスが50歳の誕生日に自身の帯番組を突然降板させられる悲劇から始まるのも、まさに女性にとって「年齢を重ねる=終わりのはじまり」を意味している。演じるデミ自身も体型や見た目のことでプロデューサーから心無い言葉を浴びせられ“全身整形”などと世間から揶揄されてきた過去を持つ。最近あまりスクリーンで見る機会がなかったのも年齢と容姿が理由で「適役じゃない」となかなか役のオファーを勝ち取れなかったからなんですって。芸能界は厳しい世界……いや待て、それは別に芸能だけの世界の話なのか?この社会で働く“すべての女性”は、本来直接結びつかない職務に就いていても“若さ”や“美しさ”に対する弊害を多少なりとも受けているのではないか。そんなことを考えさせられました。
デミと同じ時代を生き勝手にシンパシーを抱いてきた(おい)ファンのマダム達がコレを観たら度肝を抜かれるだろう、ホントによくこんな役やったよな……。ニコケイにヒュー・グラント、往年のトップスター達が若手に負けじと自らの殻を破るこれまで挑戦してこなかった新しい難役を大胆不敵に演じることが目立ちますがデミ・ムーアもそうでした。いやホントによくやったな〜(何度でも言う)でもね、普通にキレイなのよ。カメラの前でだらしない“ありのままの姿”を見せることが大切だった、とデミは語っていますがバリバリにキレイ。そりゃシワやカラダのたるみはあるさ。でもシワの数だけそれが美の年輪みたいな、美とは単純に生物学的な若さ=美と、長い歳月の間で様々な経験の積み重ねによって蓄積された美、それが目に見えない独特なオーラのようなものを……これ以上「どんだけぇ〜!」口走りそうなので割愛

そのデミ=エリザベスが老いた自分の代わりに細胞分裂したもう一人の“スー”(自分)を差し上げます!?とばかりに宣伝された怪しい広告“サブスタンス”を見て早速ヤベえ色の“アクティベーター”を体に投与。そして自らの体を突き破って爆誕するのがマーガレット・クアリー!?ピッチピチのヒップ!!ハリのある肌!!柔軟で細いボディ!!そして絶対的な“若さ”と“美”!!!「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」で注目されアカデミー賞作品「哀れなるものたち」や「ドライブアウェイ・ドールズ」で主演を演じるなど今ハリウッドで売れに売れている若手俳優“ミサミサ”ことマーガレットもまたただ若くて美しい、というわけにはいかない十人が見て十人が「ステキやん!」と思えるような「誰が見ても羨む存在を演じる」という!?この難役を見事にデミ同様に体当たりで演じているのもすごかった。
スーはエリザベスの完全なる分身。スーはエリザベス“自身”。にもかかわらずもう一人の自分のはずなのに?「自分に嫉妬し始める自分」「自分の敵が自分」という!?意識の共有はなくカラダと心がもうひとつできるという設定ですが、もう一人の自分を作ることで?「自分の知らない自分」が徐々に明かされていくというエリザベスからしたらミステリーすぎる!?自分ってこんなにウザいわけ?こんなに性格悪かったの!?それに気づいた時はもう時既に遅しヤスシ……次第にもう一人の自分が自分のことを“邪魔”な存在と認識しはじめ、唯一無二の“自分の存在”をかけた闘いが始まってしまう、これがまた面白い。うーん私のような遺伝子は絶対増やさないが世のため人のためだとはずっと思って生きてきましたがここまで自分から酷い扱い受けたら流石にしょげるなぁ…。自分の一番の味方は自分だとずっと思っていたのにぃ……!!(泣)

途中どーしてもスーに“勝てない”と悟ったエリザベスが若さで勝てないならばと若者には出せない“年相応の美”に一回方向性をチャンジして、それで一瞬救われるかな??と思いきや、結局またすぐに“若さ”に固執してしまう呪いに精神がズタボロになっていく姿はなかなか見ていて辛い。このあたりも容赦がない。容赦がないのは本作に登場する「メンズ」は女性を「品定め」する徹底的なゲスゲスおちんP星人として描いている点も面白くて、エリザベスからスーに変わった途端に態度を豹変させるエロ隣人、薬が切れ出してバスルームに駆け込むスーに気付いた恋人?が床についた血を見て「生理は大変だもんな〜笑」なんて知ったような口を聞いてんじゃねえよこのデカ◯ンおケツ野郎ぉー!!と思ったらホントにおケツ丸出しだったとか(笑)中でも最近息子さんが絶好調な気象予報士デニス・クエイドの「そしゃく音デカすぎエビクソプロデューサー」がもうコミックのキャラかよってくらいの存在感。ていうかアップした鼻の形がどことなく某セクハラプロデューサーに似てるのも絶対狙ってるよな……
そんな世の男性を敵視するような描写に、では男性が見れば嫌悪感を抱くような作品なのか?と言うとそうではなくて、ここでも極端にストレートに見せているので逆に笑っちゃうというか、異性からして女性の若さと美への執着心はホラーだなーと思う反面、そうさせたのは誰のせい?あなた達メンズでは?メンズが作り上げた男性優位な社会では?とカウンターパンチを喰らったような、そんな気分になりましたね!
音楽もバイブス上りまくりな重低音サラウンド、「レクイエム・フォー・ドリーム」ばりにまさにハードトリップした感覚にさえなるこれはちょっと都内、横浜在住の方には全席スピーカー内蔵の「ローソン・ユナイテッドシネマ」でのご鑑賞を強くオヌヌメしたい!!私も実際そこで何度も映画を観ておりますが、これまでで一番音楽がこれまたストレートに強く響いてきて振動が凄かったです!!(同時に気持ち悪い音も爆音になりますが…)鼓膜の中の音っての?耳がイカれた時に聞こえる“内ボイス”も再現されてて音響のこだわりもすごい。そして画角も徹底しておりスタジオ廊下の位置とかバスルームで横たわるエリザベスの隣でアタマを抱えるスー。そこからカメラがゆっくりアウト……もうポスターにしたいくらい絵になるよね〜。

そしてクライマックスの怒涛のグロ!ゲロ!!キショ!!!の3コンボだドン!?後半はデビュー作「リベンジ」でやったような怒涛の「血糊大合戦」が始まってしまう!?やりたいことやりまくってんなー。もう清々しい。ここまで好き勝手にやってくれて拍手!!この監督絶対ホラー好きだよね?アクティベーターの激薬はまんま「死霊のしたたり」だし!?デヴィッド・クローネンバーグやシチュアート・ゴードン、ブライアン・ユズナの「ソサエティー」、アンジェイ・ズラウスキーの「ポゼッション」……要はカラダがグチャグチャになったり触手型のクリーチャーが大好きってことですよねぇ!?やだな〜こんなクリーチャー万歳映画だったなんて知らなかったよ〜(泣)しかも色々「シャイニング」っちゃってんだもん!!スタジオのカーペットとか花“まんま”だよまんま!!バスルームがお化け屋敷化するのもそうだし(ちゃんと追いかけられるシーンさえある)そういやバスルームのカットが完全にオマージュどころの騒ぎではないヒッチコックの「サイコ」すぎるとか……そういうネタ演出も露骨、ホラーオタクのツボをこれでもかと押さえてくる。中にはR15制限内だからと強烈なスプラッター描写を「スプラッター“クッキング”」で表現するという!?七面鳥も浮かばれないよぉー!?
ラストカットも素晴らしい。“クリーン”になって終わるところが(何故か「テレタビーズ」の赤ん坊の太陽の顔を思い出した)「年相応に自分を愛せ」そして世間もそれを受け入れるべき、と言う強い批判。かなり極端かつ力強く刺激的な描写がクセになってしまう。これは今年の上半期衝撃度ランキング1位かもしれないな〜!!そして現在ファルジャ監督の前作「リベンジ」が本作の公開記念で再上映中。本作を見て気になった方はコチラも要チェックしてみては??




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