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庭女(2025)

更新日:9月15日

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【原題】The Woman in the Yard

【監督】ジャウマ・コレット=セラ

【出演】ダニエル・デッドワイラー オクウィ・オクポクワシリ ペイトン・ジャクソンほか

【あらすじ】

自動車事故で夫を失い、生き残った妻・ラモーナは悲しみの中で自身も足が不自由となった。ラモーナは重い後遺症を患いながらも、田舎の農場で14歳の息子と6歳の娘を一人で育てなければならなかった。そんなある日、家の庭に“あの女”が姿を現した…。









【感想(ネタバレなし)】
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『スクランブルエッグにドリトス入れたら殻と間違えないか?』






どーもどーもラーチャえだまめです。ホラー映画では時に“引き算”が効果的に使われます。限定的な空間、限定的人数、限定的なシチュエーション……本日ご紹介する映画もその一つ










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庭にキモ喪服女が椅子に“ただ座っているだけ”のホラー!?




その名は【庭女】!!??いやーこれまた邦題なんとかならんかったんか…(汗)ジャムおじさんも絶叫するスクリーム量産工場“ブラムハウス”の本日の一品はデヴィッド・ロバート・ミッチェルの「イット・フォローズ」のような?自宅の庭に謎の人物が勝手に椅子持ってきて座りながらただじーっとコチラを見つめているだけ!?というめちゃんこシンプルなシチュエーションかつ家主からしたら大変迷惑な話なんでありますが、、、、しかも喪服というよりイスラムのヒジャブみたいに全身黒ずくめの顔まで隠して出現した日中から一切動かずに……炎天下は死ぬぞ!?膀胱炎になるぞ!?だんだんと我慢大会してるようにも見えてくる謎の“女”の正体とは……というコチラ。異様なポスターからして興味を引き立てられてしまいアメリカでは劇場公開された1本なのですが、いやー今年のホラー映画は軒並み“配信&レンタルスルー”があまりにも多く!?日本の劇場がこぞって中規模ないしは小規模ホラー作品に弱腰で(二宮くんを8番出口に閉じ込めてホラー親善大使にして客寄せパンダにしy、)本当にホラー愛好会の皆様も心を痛めておるかと思います。ええ本作の紛れもないその1本でありまして、監督は日本でもヒットさせた「エスター」はじめ「ロスト・バケーション」「ジャングル・クルーズ」「ブラックアダム」と大作ばかり撮ってきたジャウマ・コレット=セラですよ?___を持ってしてもかぁ…(泣)


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まぁそんなセラ監督の最新作が超絶シンプルかつ低予算映画というのも衝撃です(汗)舞台は1軒のマイホームのみ、登場人物は事故で夫を亡くした松葉杖の母親とティーンの長男、幼い長女、あとイヌ1匹と庭ニワトリ数匹のみ。そして本編尺も驚愕の87分!?忙しい働き盛りの強い味方じゃないですか!?つーかこのパターン何回目だよ水道ガス電気「ライフライン切られるレベルの極貧黒人シングルマザー」が主役のホラー映画多すぎない??しかも子どもにキツく当たったりしていや大変なのはわかるんだけど……



ただこっちを見ながら座っているだけのシンプルさが逆に怖かったり、色々と訳ありな母親やストーリーの続きが見たくなる欲に駆られる演出は見事。また女が“影使い”の能力者(?)かよってくらい椅子から動かずとも日陰を手のようにグググっと伸ばして物理攻撃してくるトリッキーな技まで見してくれる。ジャンプスケアポイントは少なく、グロさも控えめなのでホラー苦手な方にもトライしやすいかもしれません。ブラムハウスとしてはかなり小規模なハウス映画ですが、次第に明かされる衝撃の真相に最後まで釘付けに。


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正直キモ喪服女のインパクト、だけが先行して作られた感は歪めませんが、しかしメインはこの喪服女ではなく母親を軸にした骨太の人間ドラマ。先述したシングルマザーの過酷さや愛する者を失った苦しみといった、世界観は意外にも来年やるクリフトフ・ガンズとは別に、実はもう一つのナンバリングなんじゃなかろうと思うくらい“静岡”に似ているのが個人的にアタリでした。本作はどこをどう解釈しても?結局「バットエンド回避不能」という残酷さを秘めていて、ただの低予算ホラーとして挑むといい意味で後悔します。当然ネタバレ厳禁だし実は伏線張りまくっていたのがまるわかりの衝撃のクライマックス、そして伏線だけでは足りぬ情報を「考察」という流れで補完させられても苦じゃない程には楽しめる、そんなスルメ映画でもあるんですね!!



……にしても本作は少しヒントが少ない映画で、初見で見ると「は?どゆこと?」となる方もいるかもしれません。次のネタバレの方で詳しく考察していきます。






【感想(ネタバレ)】




結末言っちゃうと主人公の母親は既に息子、娘、犬、そしてニワトリまでも殺害、そして最後に自らも自殺しようとする精神世界のお話だった!?犬の鎖が地面に埋まっていたのは既に死体を埋めていたから。庭にニワニワトリも死んでましたもんね。長男はたぶんガレージで“母親の影”に襲われそうになって武器で殴ろうとした→ホントは返り討ちになったのでは?娘も屋根裏部屋で◯しちゃったんでしょう。そんな罪深み自分をパニッシュする存在として絵描きの母親が描いた絵の女性が喪服女として出てきたわけです。喪服女の顔がグシャってるシーンがあるのはライフルで自殺を暗示……とよく見ると伏線だかけだったことがわかる。



けど最初からずっと現実ではなかったのか?そもそも母親の精神内にある罪の具現化した存在が子どもたちにも見えたり襲われたりする時点で説明がつかないから、個人的には冒頭からずっと現実ではなかった(子どもたちは母親の妄想)と見るのが自然だと思いました。で本作の重要なアイテムとして“鏡”が登場しますが、この鏡の意味としては



鏡に映る世界=“理想の世界”なんじゃないかと。娘を抱きかかえるシーンで一瞬鏡に娘にナイフを突き刺す姿が映ったのは“本当はこの場で娘を◯したかった”という母親の願望?実際に本当に◯してるのがちょっと厄介なのですが(実際に娘を殺したと思しき場所は喪服女が娘を襲う屋根裏部屋だと推測)ラストに子どもたちと再会して幸せなマイホームに帰っていった母親が描いた絵画のサインの文字が逆になっている→あれは母親が理想の世界である鏡の世界に行ってしまった=自殺してしまったことの暗示です。(亡き)娘から渡された人形を見て「よっしゃもう一度現実に目を向けて生きてやっか!」と前向き(我が子を殺しておいてだが)に生還エンド……とはならずに無事自殺END。父親とも逢えず極貧生活に苦しむ子どもたちを解放してあげたい、そして自らもあの世で子どもたちと幸せに暮らしたい。その結果が自殺、という解釈に思えてしまって、「自殺を推奨」しちゃってるんじゃないかコレ?とも見えてしまったのです。なのにエンドロールに心のホットラインですよ。「やってること“逆”じゃないですかセラさんよ」と。


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で今回母親はもう手遅れになりましたが?本作の母親のように貧困や育児、大切な人を亡くし疲弊して苦しむ、今を生きる人に向けての“反面教師的”意味合いが強いのではないかと。それはつまり命を奪い楽になる方法じゃなくて、まず子どもたちを「自分の手から離す」という選択ですよね。罪のない子どもたちだけは巻き込むなよという?母親が子どもたちを自分の手から離す。そこが本作唯一の“救い”なのかなーと。そう考えるとエンドロールのホットラインはまだ意味がわかるっちゃわかるけど、個人的にそれでもこの手の“配慮”はあまりいい気はしないなぁ〜、軽率に見えてしまう。



疲弊した母親が子どもと衝突しながらも最終的に母性爆発させて危機を脱するホラー映画あるあるな「被害者」として母親を描いてきた映画はあれど、本作は一味違って手遅れになるまで地に落ちて擁護もできなくなった母親を「加害者」的立ち位置に置いているのがあまりない設定だなと思いましたね。で少し気になったのが先述した鏡の世界の設定のヒントが「Rの文字を左右逆に書いてしまう娘」にしたことです。



何度教えてもRの文字を逆に書いちゃう娘。何故?あの娘は鏡の世界の“逆娘”で、あのシーンは母親が無意識のうちに入った鏡の世界なのかとも思いましたが、それならRだけじゃなく文字全てが逆になってないとおかしいし、兄にも逆だと注意されるのもおかしい(この場合兄も逆兄じゃないとおかしい)つまりあのシーンは単に逆、というヒントを言いたかっただけで、とするなら鏡と無関係の文字でそれを表現するのはちょっと苦し紛れの演出というか?さりげなく鏡を使ったり他にもやりようはなかったのかなと。もともと妄想の世界の中に、さらに理想というこれまた妄想の世界みたいなのを入れ込んでしまったから、ちょっと世界観がわかりづらくなっているのもマイナスに感じました。


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