アリゲーター(1980)
- ラーチャえだまめ

- 2024年5月12日
- 読了時間: 6分

【原題】Alligator
【監督】ルイス・ティーグ
【出演】ロバート・フォスター ロビン・ライカー ディーン・ジャガーほか
【あらすじ】
ある少女がペットとして飼っていた小さなワニが、部屋に糞をしたとことに怒った父親によってトイレに流されてしまう。それから12年後、アメリカ中西部の小さな町で何かに食いちぎられたような無残なバラバラ死体が地下溝で発見される。下水溝に何かが潜んでいる可能性を見いだした市警刑事デヴィッドは、爬虫類学者のマリサに協力を求めるが、実は町中を恐怖に陥れているその怪物こそ、かつてマリサが飼っていたワニが成長し、巨大化したものだった。(映画.COMより)
【感想(ネタバレなし)】

『ヒント:男性ホルモンの暴走』
どーもどーも不要な鼻毛を頭皮に直毛して生やす未来が見てみたいラーチャえだまめです。そんな日頃から男性ホルモンにお世話になりすぎた弊害に頭頂部が……ミスターマリック化している方もそうじゃない方も、80年代に同じく男性ホルモンにお世話になりすぎて“巨大化”したワニがいたらしいんですよ〜。その名も
【アリゲーター】!!!いやーずっと見たかったヤツ。先日近所のブックオフでお安く棚に陳列されているのを発見し即購入。ネットじゃあ結構高く売られててなかなか手が出しにくかったんですよ〜。そんな今流行りの4Kリストア版の“復刻B級パニックモンスター”とあれば?ここでご紹介しないわけにはいきません!?下水道に捨てられたペットのワニが化学薬品まみれの犬の死骸を食した結果、犬の体内にあった成長ホルモンをビンビンに受信、いや接種したことで??下水道で人知れず巨大化して街の住人たちを食い漁る…!?1980年ものです。当然CGなんてものはありません。さあ巨大化したワニをどう描く!?……という、これがなかなかB級ながら“よく出来ている”と噂はかねがね聞いていたんですが

“アハゲーター映画”とは聞いてない
OPからハゲハゲうるさいんだよぉー!!え、主演のロバート・フォスター自ら自虐ネタにしてたって?……まぁそれが結果的に“壮大な伏線になっている”というのだから恐れ入る。いやいや、本作は「ピラニア」「ハウリング」などで知られるモンスターパニックものの名手ジョン・セイルズが脚本を担当。と言うことで身勝手な大人の手によりトイレに流される小さなゲーターちゃんがもう“ジラ”に見えてくるOPに、下水道という“最も身近な異空間”からまずは人の手足が流れてくるワクワク感(?)我々の住むすぐ真下に誰もまだ見たこともない巨大なワニが潜んでいる……本作は1920年代にまことしやかに囁かれた都市伝説が元ネタらしい。そんなわけで前半はまだまともな姿すら見せてくれないゲーターちゃんだが、本腰入れて動き始める前に地上では“個性豊かなキャスト”がそれなりな存在感でお茶の間を楽しませてくれる。

先ほども言った前頭部デカの主人公はじめ警察所長にウザい記者、そして「早く帰って夕飯が食べたい」と言っていたら“夕飯”にされちゃう新米刑事……完全に“エサ”役でしかないのに妙に記憶に残る存在感なのも、ひとえに脚本の妙と言ったところでしょうか。他にも主人公に犬を売るペットショップの店主、化学薬品の研究員とその社長、市長の動物愛護団体を真っ向から敵に回すような“徹底的なクズっぷり”も昔だから出来たのかもしれない。またデカと共にゲーターを駆逐する美人爬虫類学者が幼少期に買っていた“ペット”こそ巨大化したゲーターだった……まぁ最後まで気づくことはないんですけどね?撒かれたエサで巨大化して元飼い主にまで命を狙われる……今作の“被害者”は間違いなくゲーターちゃんですよ!?(泣)
で地上で役者がそうこうしているうちに、いよいよ怒り心頭のゲーターちゃんがその姿を表す時が来るわけですがCG一切なしですよ?“ホンモノのゲーターを起用”してくるとは…!?いや正しくはミニチュアサイズの下水道や街の中に子どものゲーターを置いて歩かせているだけ、なんでありますが……実際に動物を起用して撮影するモンスター映画、それ自体は多々あるけど“巨大化”しているように見せる演出が、ロマンだなぁ〜。“本物”に勝るものってないよなぁ〜と思わず感心しながら見てしまったと言いますか??ただ全てのシーンが本物というわけではなくて、もちろん人が襲われるシーンは流石に巨大な口を持った“作り物”。しかし丈夫に作った弊害でとても重く当初予定されていた中に人が入り4足歩行する、という撮影が困難だった為に本物を起用したそう。だから作り物パートはよく見ると口以外ほぼ動いていない。

そこで“作り物感”を避けるため作り物パートは一瞬のカットだけにして、あとは襲われる演者の演技力などでリアリティのあるシーンを作っているんですよねぇー。この襲われるシーンのカット割りがめちゃくちゃ上手くて。また記者が襲われるシーンではカメラのシャッターフラッシュ毎にゲーターを一瞬見せる仕様にしてごまかしと迫力を出し、同時に喰われ続けてもシャッターを切り続ける恐ろしきジャーナリズム精神も見せる太っ腹な演出。
そんなゲーターが市街地で暴走すると同時にゲーターそっちのけで美人爬虫類学者とおデートすることしか脳がなくなるデカのホルモンバランスも暴走したってことですか?
下水道から特殊警備隊が四方八方から音を出して外におびき寄せる作戦は割と理にかなっているような(まぁ出てこないんですけどね)リアリティがあるし、クライマックスのマンホールの件も「割とありそうな展開」でワザとらしさがない。なのにめっちゃハラハラドキドキさせるのは流石だなと思いましたね(直後に大爆発しますが)
なお特典映像もかなり充実していて、中でも一番驚いたのが俳優のブライアン・クランストンがまだ俳優を目指す前に、本作の特殊効果部門のアシスタントをしていたという!?そこで出会った主演のロバート・フォスターと後に自身が主演を務めることになる大ヒットドラマ「ブレイキング・バッド」で数十年ぶりに共演した感動、そして本作を未だに自分の出世作として愛し続けていることがわかる非常に興味深いコメンタリーでした。彼が後に「GODZILLA」に出演したのは“同じ皮膚”のムジナだったからでしょうか……?
ほかにも後にSキング原作のこちらもアニマルパニック「クジョー」を撮る監督のルイス・ティーグのコメンタリーでも、本作の成功が自身の薬物依存から抜け出すきっかけとなったと「アリゲーターに救われた」だなんて……ゲーターめっちゃ人救ってるやん??またティーグ監督が「アリゲーターは資本家が生んだ負の産物の象徴」というコメントが印象的でしたね。本作は資本家が富と引き換え生み出した有害物質=公害=ゲーターに報復されるという、非常に単純明快。同じく公害で野生の熊がモンスター化する「プロフェシー/恐怖の予言」に非常によく似たプロット。B級アニマルパニックものとしてエンタメしつつ社会派映画としての側面も持つ。はじめは80年ものでちょっと古臭いかなぁと思ってましたが、今見ても予想以上に面白かった。そういう意味で“12回飛び上がる”かもしれません……?




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