異端者の家(2024)
- ラーチャえだまめ

- 5月4日
- 読了時間: 6分

【原題】Heretic
【監督】スコット・ベック ブライアン・ウッズ
【出演】ヒュー・グラント ソフィー・サッチャー クロエ・イーストほか
【あらすじ】
若いシスターのパクストンとバーンズは、布教のため森の中の一軒家を訪れる。ドアベルに応じて出てきた優しげな男性リードは妻が在宅中だと話し、2人を家に招き入れる。シスターたちが布教を始めると、リードは「どの宗教も真実とは思えない」と持論を展開。不穏な空気を察した2人は密かに帰ろうとするが、玄関の鍵は閉ざされており、携帯の電波もつながらない。(映画.COMより)
【感想(ネタバレなし)】

『結論:独身男性宅でブルーベリーパイの香りがしたら高確率でクロ』
帰宅したら玄関前に聖書持った数人の宣教師がいて取り囲まれるも「うちTVないんで」で押し返したラーチャえだまめです。本日はそんな迷惑極まりない宗教の押し売りシスターを逆にウチに招き入れて復讐する……ではなかった
【異端者の家】!!!芸人のエルフが「みんなめっちゃ観て〜」だって……宣伝あってる??そんなナウいヤング向け?ティーンスリラーっぽく宣伝されてるコチラ。

いやいやめっちゃ「信仰」なんすけどぉ〜
監督は大ヒットSFホラー「クワイエット・プレイス」の脚本家として名を挙げたスコット・ベック&ブライアン・ウッズ。監督としても「ホーンテッド」「65」などSF、ホラーを撮ってるその「クワイエット〜」のストーリー立案者、と言えば聞こえはいいが、実際のところ監督した2作はお世話にも“B級”の域を脱してはおらず前者は公開当時(今もか)量産された「お化け屋敷系ジャンプスケア」、そして後者は「なんちゃってジュラシックワー……そんなわけでどちらも既視感臭い作品で、正直本作の監督がこの二人だと知って意外でした。そしていざ鑑賞してみたところこれがめちゃくちゃ“A24”節炸裂で!?前2作はなんだったんだと思うくらい今作はとことん深い。深い?…というか「宗教」の根底を深堀して「理詰め」して、そして全面的に「否定」する……そんな“考察系宗教スリラー”だったんですねぇ。
“モルモン教”の宣教師であるシスター・“バーンズ”と“パクストン”はある日協会の“布教リスト”に載っている一軒の自宅を尋ねる。シスター・バーンズをソフィー・サッチャー、パクストンをクロエ・イーストとどちらも子役時代から活躍する今注目の若手俳優。特にソフィー・サッチャーはペドロ・パスカルと共演したSF映画「プロスペクト」を皮切りに銀河系ドラマ「ボバ・フェット」にも出演していて日本でもご存知の方も多いのではないでしょうか。今年1月に全米で公開されたSFスリラー「companion(原題)」がロッテントマトで93点フレッシュを獲得と、今後ますます主演作が増えそうなそんな超新星の前に現れるのが大御所ヒュー・グラント!!ヒュー様と言えば「ノッティングヒルの恋人」「ブリジット・ジョーンズの日記」「ラブ・アクチュアリー」…数々の名作ロマンティック・コメディで不動の地位を築いてきた誰が呼んだか「ロマコメの帝王」!!それが今回

「このオッサンきめぇ〜」にまで激変させた功績はあまりにも大きい……
はじめシスターたちの前に現れた時はいつものニコニコしたダンディメンの面影から…?「この人実はちょっとヤバい人なんじゃ……」と不穏な空気をピリつかせてくる!?笑顔のウラに見え隠れする“危ない本性”?この塩梅がめちゃくちゃ上手いんですよねー。これはファン歴が長い人ほど彼の笑顔にはじめは騙されるんじゃないかな?今作でキャリア何十年目にして“新境地”となる冷酷で危険な役を演じて新たな演技の幅を見せつけてしまっているといいますか!?「ロングレッグス」のニコケイといい昭和平成の大スターがですよ、天狗になって歳を取り“あの人は今”で埋没していく人もいる中でキャリアの枠を飛び出し今まで演じたことのない変化球な役に挑む姿勢が、もう素晴らしいですよね。このヒュー・グラント演じる“ミスター・リード”というオヤジなんですが、曖昧な要素が多い宗教をとにかく理屈で解明しようとするめんどくさいオヤジなのです!!まあ個人的にも宗教は“都合がいい”概念だとは思いますが。。。。それを宣教師のシスターたちにガチ説教して「ホラね穴だらけでしょ?」と証明して自分の正しさに酔いしれる……そりゃ聞いてるシスターたちはいい気はしませんよね!?

そんな彼の独壇場とばかりの宗教話がひたすら展開され宗教のうんちくがドバドバ……この辺りで「あーこういうのパス」と手を挙げる方もいるかもしれません。今作は日本人には正直「かなり難解」な部類の映画です。なぜなら古今東西存在してきた「宗教とはなんぞや?」みたいはテーマが盛り込まれているから。私も全く知らないわけでもないけど正直学生時代に宗教学とか専攻してたわけじゃないし、せいぜい映画で知った知識レベル。そんな中“宗教をモノポリーに例える”シーンだけは非常にわかりやすかったですね。逆にあのシーンさえなかったらもう私も無理だったかもしれない……(汗)あ、ちなみに“ジャージャービンクスも宗教です(?)”
本作は「信仰の在り方」とか「社会と宗教の繋がり方」を描いているのですが、宗教に対して否定的な意見と肯定的な意見の“ガチバトル”が展開されてしまうんですね〜。「宗教」は“支配の道具”だと主張するミスター・リードVS“救い”だと主張するシスター……ファイ!!ミスター・リードの「親から“神はいる”と教えられてきたから“神はいる”と信じるのか?」というセリフ。宗教はそんな無意識に“思考を制限”させ権威者の都合のいいように使われてきた道具に過ぎないのだよと……対するシスターのバーンズは自身の幼少期の体験から信仰心こそが“心の拠り所”であり、自身も信仰心によって救われてきたと主張……この2つの対立から見えてくる本作のテーマは「要はどう捉えるか」と言う事なのではないかと……。

後半はそこから「ならば絶対的に“正しい宗教”を私が説いてやろう」とミスター・リードの熱がさらにやばい方向にヒートアップしていって…??外見からは想像つかない“からくり屋敷”のようなギミック搭載の“リード邸”に閉じ込められてしまうシスターたち。そして後半はさらにリードの“信仰心試そうぜゲーム”に強制参加させられてしまう!?「クワイエット〜」「ホーンテッド」で既に屋敷ホラーは習得済みなスコット&ブライアン監督、不気味な屋敷の演出も良かったですね〜。ただ全体的に“溜めて見せる”シーンが多く溜めた割には…そんなに溜めた意味はなかったようなシーンも見受けられました(汗)本作は顔の“アップ画”が非常に多く特にミスター・リードの“顔の圧”が非常にミステリアスで恐怖を感じさせますね〜。登場人物もほぼ3人に絞り(トファー・グレイス…)物語に集中させたり“伏線”も用意周到……ラストの“蝶”は何を意味するのか、“どちらなのか”見終わったあとの考察も楽しめる、そんな映画でしたねー。




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