罪人たち(2025)
- ラーチャえだまめ

- 7月3日
- 読了時間: 8分

【原題】Sinners
【監督】ライアン・クーグラー
【出演】マイケル・B・ジョーダン ヘイリー・スタインフェルド マイルズ・ケイトンほか
【あらすじ】
1930年代、信仰深い人々が暮らすアメリカ南部の田舎町。双子の兄弟スモークとスタックは、かつての故郷であるこの地で一獲千金を狙い、当時禁止されていた酒や音楽を振る舞うダンスホールを開店する。オープン初日の夜、欲望が渦巻く宴に多くの客が熱狂するが、招かれざる者たちの出現により事態は一変。ダンスホールは理不尽な絶望に飲み込まれ、人知を超えた者たちの狂乱の夜が幕を開ける。(映画.COMより)
【感想(ネタバレなし)】

『自分たちの“居場所”を死守せよ。』
海外でテイクアウト頼むボスって大概グリテンフリーにこだわる〜♪どーもラーチャえだまめです。本日はそんな現在大ヒット配信中のマーベルドラマ「アイアンハート」のプロデュースも手がけるライアン・クーグラーの長編映画5作目にして巨大企業ワーナーから作品の「ファイナルカット権」(監督が作品の編集、最終的な形態の最終決定権を持つ)と「25年後著作権の返還」(作品完成後25年後にすべての著作権の権利を持つ)というトンデモクライシスな強気の条件を見事飲ませた、親会社を黙らせるほどの作品に対する並々ならぬ愛と自信の現れでもある!??欧米人も公開前と後と評価の高低差ありすぎて耳キーンなったとかいないとか

【罪人たち】!!!2025年上半期の“ダークホースは確実にコレ”と言っても過言ではない!?全米で公開されロッテントマトスコア97〜100%、シネマスコア「A」評価というホラー映画としてはジョーダン・ピールの「ノープ」超えの過去35年で“最高評価”を獲得、早くも来年のアカデミー賞の“有力候補”とも呼び声高い予想を超える反響に海を超えた我がジャポニカ列島でも劇場公開はしないのか、まだかまだかとSNS・映画館ほか各方面で要望が殺到。結果日本でも「緊急劇場公開」が決定したという!?故に危険なウイルスとブラピのちょうど間に差し込まれた公開日&上映数の少なさ&急ピッチで製作されたであろう劇場用パンフレットの販売部数も足りず公開1周目にして現在各劇場で売り切れが続出したという!?私が足を運んだ東ブクロのグラシネでもはじめ売店に行った時は売り切れ(その後映画を観終わった後再訪したら再販されてて無事ゲット)で、改めて本作の需要と供給のバランスがまだ追いついていない現状かとは思いますが(これは拡大公開待った無しでしょうワーナーさん!?)これは絶対に映画ファンならば“布教”せずにはいられないまずコレ

“IMAX”で観なきゃダメなヤーツ。
“全編”IMAX70mmフィルムカメラとウルトラ・パナビジョンカメラの配合、繰り返します全編IMAXカメ……正直コレだけでチケット代は十分に回収できると!?未だ存在しない業界初のこの組み合わせで魅せる“最高レベルの映像「美」”。まずここからして本作を激推しなければならない理由があるのですよ!?いやー本当に映像が凄かった(スマンこれが語彙力の限界…)これは実際に「観て下さい」してもらってじゃなきゃ凄さが伝わらないと思うのだけれども〜、いきなりクレジットの話からで申し訳ないクレジットの「スペシャルサンクス クリストファー・ノーラン」で思わずニヤリ顔が止まらないクーグラー監督はIMAXの先駆者クリストファー・ノーランと妻でプロデューサーのエマ・トーマスからIMAXカメラの効果的な使用法などの助言を受け、さらに本作の撮影監督オータム・ディラルド・アーカポーも同じく「インターステラー」後のノーラン作品で撮影監督を務め「オッペンハイマー」でオスカーを手にしたホイテ・ヴァン・ホイテマと交流して撮影方法を伝授されたという。彼らがそこまでして全編IMAXカメラという初挑戦にも関わらずこだわったのは、ひとえに「最高の映像クオリティ」とそれを「映画館で体験してほしい」という想いからであって、重複しますがこれはサブスクの小さな画面、中規模の解像度では絶対に表現できない、否これは絶対に映画館(しかもIMAX)で観なければ魅力が伝わらない映画になっちゃっているんですよねー!!(なのに日本ではIMAX上映館があまりに少ないってどゆこと??)これでクーグラーはノーラン、ドゥニ・ヴィルヌーヴと並ぶ3人目のIMAX信者になったのでしょうか!?彼の今後の作品に俄然注目したい所でありますが……
でその圧倒的な映像美で映し出されるは1932年のアメリカ南部、シカゴのギャング街で(どういう理由か)富を得た双子の“スモーク”と“スタック”が故郷に戻り酒と歌と踊りの三拍子揃った夢の酒場“クラブ・ジューク”の準備からオープンまでの“たった1日”。主演は(やっぱり)クーグラー監督といえばマイケル・B・ジョーダンしかいませんよね!?そのジョーダンも今回は「ジョーダンだろ…」と頭を悩ませたとかいないとか瓜二つの一卵性の双子の役というかつてない難役に挑んでいるのですが……

堅物で笑顔を見せないスモークと、ことあるごとにニタァと歯を見して笑顔を見せるスタック。もう目力して全然違うというか!?青いハットと赤いハットで「テネット」的色分けなんてもはや必要ないくらい!?違う俳優がCGで同じ顔にして演じてるように見える逆転現象まで起きるレベルで二役を見事に演じ分けているんですねー。そしてスモーク&スタックの付き人みたいな従兄弟役で今作が長編映画デビュー作となる“プリーチャー・ボーイ”こと新人マイルズ・ケイトンの美声も素晴らしい。ゴスペル一家に育ち幼少期から歌手を目指してJay-ZのMVやH.E.R.のツアーにバックボーカルとして参加。その歌声は折り紙付きなんでありますが今作で“ブルースギターの演奏家”というキャラクターを演じるにあたりなんとギター未経験だったのを猛特訓して2ヶ月で習得……したとは思えぬ慣れた手つきでギターを弾きながら圧巻の“激渋ボイス”で歌う圧巻の「ブルース」も是非とも劇場で体感して欲しい!!

……という劇場案件なのは「映像」だけではないLIVE会場さながらの「音響」。大音量で大迫力。1932年のアメリカ南部で根付いた「ブルース・ミュージック」。ブルースに精通していなくても全く問題ありません。皆が音楽に誘われ酒場に集い歌って踊って“狂う”様を!?巨大なスクリーンから全身で感じてほしい。クーグラー監督の祖父がブルース好きだったという、本作はそんなブルースをこよなく愛した祖父へのラブレターとも言うべき作品で、音楽への愛が非常に強く物語にも密接に絡んでくるんですよねー。中でも音楽の力が時代や国、過去や未来の壁を超え一つに繋ぎとめてしまう異色のファンタジア的演出はまさに「無限大」の象徴。音楽の力ってスゲー。でも同時に音楽は「魔」の者たちも引き寄せてしまうという??

おいチャットGBTテメェ……
公式でも既に公表しているのでお伝えしますが本作が“実は吸血鬼映画だった”という!?待て待て先程からそんな風には一切見えなかったが??……それもそのはず本作は「前半:重厚なブラックヒストリー」×後半:「ドB級ヴァンパイアホラー」という!?おいおいそれってつまりタランティーノの「フロム・ダスク・ティル・ドーン」じゃねえかと思う方もいるでしょう。いや全くその通り。めちゃくちゃ影響受けてる(というかほぼ同じ)わけですが、超絶豪勢な映像とサウンドシステム使ってですよ?後半思いっきりドB級な展開をやってしまうというこの贅沢さ。全く異なる2つのジャンル映画を1本にする奇抜な展開。でもとても自然にシームレスに移り変わる「繋ぎ」の違和感の無さがこれまた凄いんですよねー。でもってそのヴァンパイア、否「白人=後から土足で“歌”を搾取する吸血鬼」という設定がまた……あからさま過ぎるといいますか白人をウイルスか何かのように邪険に捉えているのが逆に凄いなと……(汗)

わかってはいたけどやはり今回も「肌の色」問題を浮き彫りにするブラック・ミュージックのほかにもヒストリーやらKKK、黒人黒人黒人……こりゃ確かにアメリカで大ヒットするのは必然、みたいな内容ではあるんですよね。まさしく近代史の「THEアメリカ映画」という感じ。しかしここ数年ハリウッドで量産される日本人からしたら「もういいよ」レベルのくどさを、「人種関係なく」人々の心に響く「音楽」に乗せて見してくるから意外とサッパリ見れちゃう。プラス先に言った後半のドB級ホラーという安っぽさで、人種映画でありながら重くならず全体のバランスがめちゃくちゃいい。非常に「お代わり」したくなる程の見やすさがある。ちなみに出てくるヴァンパイアが白人のアイルランド系なのもちゃんと理由があって、彼らもまたイングランドから迫害されてきた歴史があり、はじめは「ヘイブラザー」とばかりにスモークたちに近づく親近感は迫害されてきた者という共通点から。しかし彼らも後に“差別する側”に回る。黒人たちに永遠の命と引き換えに「仲間に加われ」と迫る光景は「白人社会」へ取り込まれていく黒人文化のメタファーそのもの。そしてヴァンパイアから必死に抵抗するスモークたちは、失われゆく自分たちの文化を守ろうとする、それは「今」まさにアメリカで起きている現在進行系の実情にも重なって見えるてくるという、、、、
クーグラー監督自身のルーツであるアフリカ系アメリカ人の歴史やカルチャーに最大限のリスペクトを敬し自分たちの“居場所”はココであるという力強いメッセージを感じ取れる、シリーズものや原作ものではない“完全オリジナル作品”として異例の快挙を成し遂げた本作、是非とも劇場でそれもIMAXで(いい加減しつこい…)堪能して頂きたいですねー。




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