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顔 (2025)

24 時間前
読了時間: 8分

【原題】The Ugly

【監督】ヨン・サンホ

【出演】パク・ジョンミン クォン・ヘヒョ シン・ヒョンビンほか

【あらすじ】

生まれつき目が見えないハンデを乗り越え、著名な篆刻家(てんこくか)となったイム・ヨンギュ。息子のドンファンは偉大な父を敬い、事業を陰ながら支えていた。そんなドンファンに、警察から40年前に消息不明になった母チョン・ヨンヒの遺体が地中深くから発見されたとの知らせが届く。ヨンヒは何者かに殺された可能性があるという。あるドキュメンタリー番組のプロデューサーの提案で、ドンファンは母の死の真相を探り始める。調査を進める中で、ドンファンはヨンヒが「醜い顔」をしていたという証言を次々と耳にし、ショックに打ちひしがれる。(映画.COMより)


【感想(ネタバレなし)】

『この世に「良心」はないんか。』





他人の幸せを自分の事のように喜べる人、今日もありがとう。ラーチャえだまめです。本日はそんな世の中生きていれば人間不信に陥ることだってあるじゃないですか。










たかだか顔が美形で産まれなかった「だけ」で人生狂わされるなんて、本当にふざけ倒した話なんですよ。




【顔】…!!??監督は日本でも大ヒットした横顔新幹線やないかーい!!ではない「新感染」シリーズのヨン・サンホ。次回作はまたしても「ゾンビ」ものという!?(日本では来年公開予定)生粋のSFホラーオタクかと思いきや、アニメーション畑出身のアニメ映画も数多く手掛け、しかもそちらでは実写では再現出来ない、否“実写ではエグすぎて描けない”クセ強鬱系が多いという〜!?彼の作品全てを見たわけではありませんが、おそらくこれまで実写映画では“手加減”してアニメーションでのみ発揮していた“エグみ”を?ついに実写でも容赦なくやってくれちゃったのでは!?一種のパンドラの箱が開かれてしまったような、そんな衝撃を受けてしまった今作。



もう観終わったあとの「胸糞」感たるや、あー韓国映画ってこういうのなんだよなー。全く容赦がないというか人間が余計なことしかないというか。深く心をえぐってくるような「この世に神様なんていない」そんなことさえ思ってしまいましたよ。感受性豊かな人はちょっと見終わったあとのダメージを覚悟したほうがいい。「素直に“面白い”とは言いたくないが、でもこれは“凄かった”。」そんな映画なんでありますけども



本作には人の顔を指差して「バケモノ」と呼び嘲笑い、差別して虐めるク〇ゴミな「醜い」人間“モドキ”がワンサカ登場するのです。それだけでももう観たくないと言う方もいると思います。本作は人間社会がいかに「ルッキズム」に支配されているかを“包み隠さず”その目で直視させる。全盲の一流ハンコ師“イム・ヨンギュ”の特集番組の撮影に付き合う息子“ドンファン”の元に、ある日警察から40年前に消息不明になり“顔”すら覚えていない母“チョン・ヨンヒ”の遺体が地中深くから発見されたと連絡が入る。それまで母親の事は行方不明になったとだけ父から教えられていて、彼女の性格も彼女が写った写真すら1枚も持っていなかったドンファンは、故に突然訃報を知らされるも実感が沸かず戸惑いつつも後日葬式を執り行う。畏敬となる写真すら用意できずに。そこで式にやってきたヨンヒの“家族”を名乗る親族から母親の生前のこと、母親の写った写真を貰えないか打診しようとするのですが……



親族から返ってきた返事はあまりにも意外なコトバだった。「彼女はもう“家族”ではない」。幼少期に母親の浮気を周りに言いふらし金目のものを奪ってひとり家から出ていった最低な子だったと。そして見た目はあまりに“醜く”親族たちは口を揃えて「あのバケモノ」とドンファンを目にしながらそう口にしたのだった____。



とまあこんなのまだまだ序の口レベルでして、ドンファンは顔の知らない母親ヨンヒの死の真相を探る旅に出るのですが、生前のヨンヒのことを知る人物が「全員ク◯」すぎまして。とにかくヨンヒのことを当時からめっちゃイジメていた連中ばかりで、“その息子”とは一応伏せて訪ねたドンファンに向かってヘラヘラした顔で醜いだのバケモノだの“便所紙”なんて言って。なんで虐めた奴らがのうのうと年老いながら未だに地に足つけて歩いてんだよっていうね?ドンファンと一緒に真相を探る“お手伝い”をする番組プロデューサーの若い姉ちゃんも表面上は親切心でドンファンに近づくも内心は「父よりこっちの方がネタ的においしい」ク◯メディアの考えるソレで、ドンファンを利用することしか考えてないしでもう、終始ずっと、とにかくドンファンとヨンヒが可哀想すぎるううう…!!!しかも生前ヨンヒの回想パートでもずっとイジメられるシーンで生前のイジメと死した後も死体蹴りに遭い続けるヨンヒがあまりに救われなさ過ぎて……なぜ彼女がこんな目に遭わなければならないのか……なんて思いながら死の真相が徐々に明かされていく。



ミステリアスなストーリーですが序盤でだいたいオチが読めてしまったり、チャプターシステムをとっていますが、ほぼ一本道で真実まで突き進むシナリオ、間隔が短くてあまり小分けにするメリットを感じられなかったり設定はそこまで唸らせられるものはありませんでしたが、ラストで予想外の展開を見せるといいますか「いやお前も“そっち側”なのかよ」という!?これは整形大国だけのお話では全くなくて。日本でもどこでも“この世で生きている限り”このルッキズム問題は永遠に存在し続けるかのような。いや当時は〜でしょう?悪しき過去の過ち……というわけでもない、令和8年現在進行中の問題でもある。



またルッキズムだけではなく“女性”それ自体の社会的地位の低さも描いていて、男性優位思想の醜さエキスもたっぷりと味わえる。“NO”を「NO」と言えない社会、間違っているのに何も言えず見て見ぬふりをするしかない、「臭いものには蓋をしろ」、正そうとしない・出来ない……“NO”を「NO」と言うのが絶対的に正しい、けど正しいことが「正解ではない」とは何なのだ?社会がそんなだから“良心”は失われるのだ、という作者の強い“怒り”のようなものも感じました。正しくあろうとした者に対して、圧倒的にそうじゃない者が多すぎて、正しき者が押しつぶされる社会の構図。あまりに腹立たしく「正直者がバカを見る」世界線を真っ向から全否定したいはずなのに、気づけば自分も「アチラ側」の人間になっているかもしれない、いや一度でもなったことがない人間の方が少数派なのでは…??やるせなささえ感じてしまう。「自分だって、いつ加害者側に立ってもおかしくはない」のだと。






【感想(ネタバレ)】




「よりお父様に似てきましたね」プロデューサーの嫌みったらしいセリフ。ほんとにこの小娘も最後まで嫌なヤツだなー…と思って見ていたんですが、この女性プロデューサーは先述した“女性だから”という偏見から真っ向から対抗する存在で、ヨンヒの壮絶な話を聞いて流した涙は嘘には見えなかったし、肌の露出の多いジーンズを履いて男を誘惑して取材に活かす武器として女性という立場を利用する、ヨンヒのいた時代とは違う“現代”を象徴する存在だったんですね。



でもドンファンがまさか最後に奪った映像データの“都合の悪い所だけ削除する”「臭いものには蓋をする」お前も結局「ソッチ側」なのかよおおおー!!!(怒)お前だけはヨンヒの「良心」を受け継いでくれると信じていたのに……これでヨンヒ以外「全員醜い」という結果でよろしいですか??



最後までヨンヒの顔はわからずに終わるかと思うじゃん?最後の最後にプロデューサーから渡された写真を見て「え、全然顔普通じゃない?」……そう本作の一番の落とし穴はそこなんじゃないかと。「このレベルの顔面でイジメられる」もっと酷い顔を想像していませんでしたか?でも実際は「なんでこの顔で生涯イジメにあうの?」ではないでしょうか??それこそがルッキズムの狂気の最たる部分というか、実はヨンヒは「顔が悪いからイジメられた」わけでないのではと思うのです。



「性格は顔に出る」とは言いますが、ヨンヒの「性格」を皆嫌っていたのでは?そして嫌いだから「醜い顔に見えた」のです。姉妹にはヨンヒの浮気を言いふらし宝石を盗んで家を出ていった「性格が嫌い」、工場の同僚には「優しい」はずの社長の顔に泥を塗った「性格が嫌い」と。社長にレイプされヨンヒに打ち明けた女性はヨンヒのことを「醜い」とはひと言も口にしていないのもポイント。自分をかばってくれたヨンヒにあの時は怒りをぶちまけてしまったが、今では申し訳ないと感じている、だから彼女にはヨンヒの顔は醜くは写らない。



同様に我々にはヨンヒの性格については断片的なことでしか把握出来ず、むしろ数々の証言から良心の塊のような存在だと想像を巡らせる。だからあの写真を見ても醜い顔だとは思わない。いや実際そうなのだから。ルッキズムとは単に「見た目の良し悪し」ではないのです。しかもこれはプラスに働くよりマイナスに働く。つまり人はその人が「都合が悪いと無意識的に後付けで外見も醜く見てしまう」ということなのです。気に入らなければ外見も攻撃するようになるのが人間。



そして一番虚しくなったのは(やっぱり)父ヨンギュがヨンヒを殺害していたという事実。しかもてっきり偶発的な、悲劇的な“事故”かと思ったら思いっきり殺意沸いてヤッちゃってるし??はぁプライドが何だ?周りから騙されて婚約したヨンヒと暮らせば、自分をバカにしている憎き連中の“思惑通り”になってしまう。それが許せなかった。たとえ目の前の“本物の愛”を手にしていたとしても……。



また絶対的権力者のご贔屓にしている社長に楯突いていたのもそうだし、“周りからの目”も気にしていたのであろう。隣にいる美女と付き合ってるフツメン男を見て、自分の恋人と見比べて相手を羨ましがる隣の芝生は青く見える最低心理のアレですよね。絶世の美女というネームバリューに釣られ婚約すれば周りから羨ましがられる。周りからの評価も上がる。自分の“価値”が上がる。しかし事実は誰も欲しがらない女だった。それで己の“プライド”が傷つけられた〜とか思ったんじゃないですか??全盲なのにヨンギュもまた“ルッキズム”に囚われ、そして詰まらんプライドに左右されてしまったわけです。でもね、そんなアンタが「なんで“選ぶ側”」なんだよと。お前だって誰からも選ばれなかったかもしれんではないか。そんな中、唯一自分を愛してくれたヨンヒへの“恩人”としての心が、付き合い当初はあったのに結婚してから失われちゃったのかな。本当に恋愛は“初心忘るべからず”ですよねー。

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