top of page

ウルフマン(2025)

ree

【原題】Wolf Man

【監督】リー・ワネル

【出演】クリストファー・アボット ジュリア・ガーナー マチルダ・ファースほか

【あらすじ】

サンフランシスコで妻と娘と共に暮らすブレイクは、ある日、失踪していた父の死亡通知を受け取り、遠く離れたオレゴン州郊外にある実家を相続する。キャリアウーマンである妻シャーロットとの結婚生活に綻びを感じていたが、休暇を取るよう説得し、幼い娘ジンジャーを連れて実家へと向かう。ところが夜中に実家の農場に向かう途中、謎の生物に襲われ、一家は辛うじて実家に逃げ込み、辺りをうろつく恐ろしい生物から身を潜める。だが夜が更けるにつれ、ブレイクに異変が起き、その姿は得体の知れない生き物に変わり始める。




【感想(ネタバレなし)】
ree

『最も“愛する者”に狩られる恐怖』





手の甲だけ豆できて毛生えてる人だいたいトラックで荷締めしてるぅ〜♪どーもラーチャえだまめです。早速ですが本日は職業病ならぬ“感染病”によって?全身毛むくじゃらになったあのユニバーサルな人狼の最新作が実はちゃっかり配信されていた



【ウルフマン】2025年Ver!!!いやー長すぎてポンデリング見ただけで変身するところだった我らがリー・ワネル最新作。しかも配信スルーですか?……と言いながら配信の悪いクセ「いつでも観れる」という安心感✕ここ最新劇場作を追うのに必死でなかなか自宅で映画が観れなかったこともあり今回ようやく鑑賞することが出来ましてですねー。かつて“ダークユニバース”なる(「え、ナニソレ?」)幻の企画で5時間遅刻魔のジョニー・デップ主演でやるはずだったのを大幅改変して挑んだドS「透明人間」が大ヒットしてすっかりヒットメイカー入りした「ソウ」のアダム・フォークナーことリー・ワネル監督が次なる新作にこれまた同じく“ユニバーサル・モンスター”の狼男をまたもやユニバーサルとブラムハウス・スタジオ共作でリヴートする、と聞いた時はちょっと安直過ぎやしないか?と不安もありつつ、でもこれまでデビュー作「アップグレード」から“SF”スリラーに定評があるワネル監督の「ウルフマン」は、きっとオリジンリスペクトで固めたジョー・ジョンストン版ともまた違った“現代的解釈”も期待出来ますし??ずっと指を咥えて楽しんごしておりました。


ree

今年1年振り返ればノスフェラトゥ(事実上のドラキュラ)に始まりフランケンシュタイン、そして狼男とユニバーサル・モンスターが令和の時代に一同に復活したトンデモねえ1年だったわけですが?何故に今作だけめっちゃ知名度ないじゃない!?しかも評判もなんだかすこぶる悪いではないか。配給がリスク回避でひっそりと配信スルーした判断的にもかなり苦戦を強いる状況??でもあのリー・ワネルですよ?んな派手にコケるなんてことはねえでしょう……とかゴタゴタ言いながら観させていただいたのですが



結果的に申すと世間で低評価されるほど“BAD”な映画には(私は)感じませんでした。普通に楽しめましたよ?少なくともクリーチャー愛好家には安心してオヌヌメできる1本かと!ただ評価があまりよろしくないのも納得出来てしまう、そんな1本でもありましたねー。









早速冒頭から狼男伝説を“狂犬病のようなものに感染”という今風解釈で解説、ほぉーこれがワネル版の狼男ですか!!ステイサムも惚れ込むワーキングウーマンで一家の大黒柱ながら家族との会話を疎かにしがちな「ウェポンズ」のジュリア・ガーナー演じる妻の“シャーロット”と引き換え、娘さんミュータントと違いますぅ?お互い以心伝心しまくるレベルで娘の“ジンジャー”の一番の親友ポジションを掴んだ「ポゼッサー」「クレイヴン・ザ・ハンター」のクリストファー・アボット演じる“主夫”の“ブレイク”。ライターって仕事ある時とない時の差激しいよな、収入的にも妻の方が上よな、だからブレイクは妻のシャーロットを献身的に支える役目を全うするために必然的に家で家事全般をこなしていればそれだけジンジャーと一緒にいる時間も増えるわけで?ジンジャーが生粋の“パパっ子”になるのも自然な流れという!?


ree

そんな大好きなパパが理性もクソもねえクマみたいな凶暴な狼男になってしまったら??「最も“愛する者”に狩られる恐怖」描きたいのはコレですよね?やりたいことはすごーく良く伝わります。これまで狼男作品全般でいえる抗えない“負の継承”みたいなのも勿論絡めつつあくまでメインはコッチ。前作「透明人間」は「“今まで愛していた”者から襲われる」と過去形な愛だったから吹っ切れて全力回避出来ましたが?今作の愛はまだ継続中。それでいきなりモンスターになった家族を嫌いになれますか?◯せますか?という重いテーマと狼男とのかけ合わせも良かったと思うし、古典的モンスターに“ファミリードラマ”を絡めるのも良かったと思うのですが____



ただ「それだけ」に的を絞ってしまったから?ここまで「単調」な作品になっちゃったのかなーという印象も。まずストーリー。幼少期にトラウマを抱えていた実父の訃報を知ったブレイクが、かつて父と住んだオレゴンの森の中にある実家に家族を連れて遺品整理をしに行く、という筋書きからはじまるもその後は比較的早い段階で狼男に遭遇、襲われたブレイクの“変化”も進む中ひたすら襲われるのを回避し続けるという先の読める展開で波がない。次に登場人物。ブレイク、シャーロット、ジンジャー、ほぼ3人(あとは「アップグレード」のベネディクト・ハーディが一瞬だけ登場)そして物語の主な舞台は森で事故って横転したトラックと実家の一軒家のみ。この引き算方式の極限まで無駄を削除したシンプル設計でテーマに観客を全集中…!!させるのが狙い?本作が不人気の理由の一つに端的に言って「見どころが少ない」というのがあると思うんですよ。もう少しストーリーを捻るなりアクションを増やすなり一層ゴア描写を派手にしたりとかね?ジョー・ダンテとジョー・ランディスのせいですっかり狼男=変身シーンと意味づけられてしまった狼男と言ったら〜な見どころも、本作ではそこまで重要視していない印象。そこが結果的に物足りなさに繋がってしまった感じは歪めない。


ree

いや当初あのライアン・ゴズリングが主演候補だったらしく、もし彼だったらあんなにおどろおどろしい特殊メイクにならずにイケメン狼男に仕上がっていたのかもしれないが??ワネル版狼男は結果的に毛量が増えるというより“てっぺんがなくなる”という!?落武者スタイルがしかし逆にカッコよさ<おどろおどろしさを優先させてくれてクリーチャー感が増して、犬みたいに鼻じゃなくて下顎が出っ張って美容整形で失敗したみたいな鼻筋も想像していたのとはだいぶ違ったデザインでコチラも“現代的”に解釈された狼男なのか…??個人的にいいデザインだと思ったんだけどなー。あとちゃんとアニマトロニクスも使った特撮造形もリアルで素晴らしく、先述した愛するものが徐々にバケモノになる残酷さと言えばな、クローネンバーグの「ザ・フライ」の影響を受けているのがわかるシーンもあって、哀しきクリーチャーの性映画でもあるんですねー。



一方でジュリア・ガーナーの「無駄使い」という一部批評も。確かにはじめはブレイクが主役だったのにいつの間にか彼女が演じるシャーロットにバトンタッチされた後もイマイチ印象が薄い、というか終始“当たり障りのないことしかしない”という意味では、個性的なキャラクターではないという見解もできる。



ただシャーロットから見てブレイクはとっても家庭的である意味「完璧すぎる夫」。そんな頼もしい夫に家庭を任せつつジンジャーが自分よりブレイクのことを好いていることが若干気がかりだった。そこへブレイクの人狼化で突然「じゃあアンタが娘を守ってみろよ」状態に立たされたシャーロットのぎこちなさがリアルというか。最近ずっと仕事優先で娘と繋がれなかったツケが回ってきたというか!?最も頼りになる存在を失い心細くなるのと娘(と夫)を助けられるのは自分しかいない、となんとか前進しようとする感情とが揺れ動く姿をとても静かなリアクションで見せているんですねー。


ree

あと口コミの中で“暗がりが多くてよく見えない”という声もありましたが、実際は本編の半分は昼間のシーンだし“狼男視点”という面白い描写があって、狼男視点では暗がりの森も夜空に照らされビカビカに青く光っていたりして、そういうシーンもあるんで実はそこまで暗いシーンはない(光量の弱い弱小プロジェクターで観ても問題なく映りましたよ?)そこまで心配する必要はないと思います!あとは結局のところ「狼男についてなーんもわからん!」と投げちゃってる所??そこはせめて「透明人間」を“透明なスーツ”と解釈したみたいに“科学的解釈”してもっと説明してほしかったかな〜!!あまりに謎を多く残したまま終わってしまうのも気になる点ではありますが……



先述した変化球のない単調で“無難”におさめたのがちょっとワネル監督らしくない印象も受けましたが、個人的にはそこまで言うほど悪くないんじゃないかな、と。ちなみに2024製作ですがフランク・グリロ主演の「Werewolves」&ほぼ「ノスフェラトゥ」キャストで今度はロバート・エガース版「狼男」がクランクインされたばかりという!?……狼はちょっとしばらくいいかn、





【感想(ネタバレ)】





なんだか後半にかけて非常に「不純」にも思えちゃうんだよねー。だってブレイクは「本当に妻子を襲う気」だったのか、という見方も出来てしまわないかい??ただ臭い嗅ぎに近づいただけじゃ(犬じゃないんだから)最後まで内心葛藤してるし実は目の前にいるのに襲わず暗闇の中でただ見つめるだけとか、行動に??なシーンもあって。


ree

あとそれが一番よく感じたのが、狼男って走る時は4足歩行じゃん?ブレイクも4足歩行で走るシーンはあるけど、あれは片脚を失っていたから。4足歩行で走るのと“でしか走れない”のでは意味が変わってくる。この狼男の象徴的なアクションを片脚亡くしてじゃないと行わない=完全な狼男じゃない、という意味かなーと。最期もさながらブランドンバエの如く俺を殺せってアイコンタクト?したようにも見える。そこも「最後まで本能より理性が勝った」という点で、ブレイクは最後まで人間のまま逝けた、とは見えないだろうか?



それなのにですよ?シャーロットはせっかく祖父狼男からも守ってくれたブレイクを、その見る影もなく祖父狼男と同じ容姿になった瞬間「近寄るなぁー!!」って逃げ惑って罠にもかけてライフルまで向けちゃってよ!!中盤まで狼男になっても「妻子を守る」行動をとってるのがちょっとややこしいよね。例えば妻の顔を思いっきりひっかいたり(それじゃ感染するから無理か)妻をもうちょっとズタボロにして明確に敵意があるとわかる描写を入れたりして“動機づけ”をもう少し持たせて欲しかったなーと。


ree

「お父さんは狼男になった」「狼男になってもお父さん」の噛み合わない最後までどっちかわからない、決められない、けど娘を守るためにどこかでお互い「線引き」をしないといけない、となった時に妻も夫もそれぞれの立場を読んで妻は夫を撃ち殺す。夫は妻に自分を殺させる。2人の行動の先にあるのは「大事な娘を守る」ただ一つのみ。これってめちゃんこ本能的というか理性というより動物的な行動だよね。でも“愛”ってそういうものじゃん??みたいな、結局は“愛は大地より広大”ってことで……締めますか。

bottom of page