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サクッとレビューその22「メメント」


『“裸の王様”』

 
【サクッとレビュー(ネタバレなし)】




どーもどーも昔誰かに「お前のアタマはニワトリか」と言われた気がするラーチャえだまめです。早速ですが本日はそんな3歩ならぬ“10分経つと記憶が消える”中で己に課した“復讐”を成し遂げようとする全身入れ墨男の珍道中



【メメント】!!!ノーラン特集〜!!先日「フォロウィング」をご紹介しましたが、クリストファー・ノーランの名を一躍世間に知らしめた、まだ「ダークナイト」を撮る前の“初期ノーラン作”として弟ジョナサン・ノーランの執筆した短編小説を映画化し2000年に公開されたコチラ。「フォロウィング」に次いで今度は1週間限定で劇場公開されてしまうという!?レアな体験を先日させて頂きまして、いやー当時「ビギンズ」でノーランを知ったのと当時私がドはまりしたプレイステーションの「サイレン」というホラゲーの“元ネタ”にもなったこともあり、当時レンタルして見た記憶以来、なんでありますが……



おやおや?最後にこんな“語って”たっけ??やっぱり“記憶”というのは曖昧になるものですねー。そんな「記憶より記録」派のガイ・ピアース演じる“レナード”という男は、愛する妻を何者かによって眼の前で殺害され、自身も犯人と死闘中にアタマを強く打ち“記憶が10分しか持てない特殊な記憶障害”を患ってしまいます。未だ未解決のこの事件の犯人を見つけ出し亡き妻への“復讐”を心に誓ったレナードは?10分間しか持たない記憶の中で、なんとか犯人の足取りを掴もうと奮起する。しかし記憶を“上書き”出来ない彼にそんなことなど可能なのか?そこでレナードは考える。犯人の情報は“すり替えの効かない”己の肉体に“入れ墨”として記録、また出会う人全ての顔写真をポラロイドで撮影、写真に人物の情報をメモし出会った記憶を失ってもすぐに誰なのか把握出来るようにした。こうしてレナードは体の入れ墨と写真の情報“だけ”を頼りに、犯人探しの旅に出る……。



“記憶を持てない男の犯人探し”というトリッキーな設定からしてもうノーラン万歳なのですが本作はなんと言っても我々視聴者も?レナードの“疑似体験”が出来てしまうという!?



「時系列の逆行」コレなんですね〜。本作は各シーン毎に“区切られて”描かれる。えーっとつまり本作を全部で“10個のシーン”にわけるとするでしょ?で通常の映画なら1から順番に描いていくのを、本作はケツの穴の10のシーンから描くのです??そして10の最後が9に繋がり、今度は9から8、7、6、5……時系列を逆走させて見せるこの画期的な手法。この手法により我々視聴者は毎度そのシーンの「結果」から見せられるから「状況が把握出来ない」。そしてこの感覚こそが、さっきまであった10分前の記憶を失い毎度状況が把握出来なくなるレナードの感覚のそれなのです。だから我々もレナードと一緒になって犯人は誰なのか推理しながら、そしてこの物語が一体“どこから始まったのか”を紐解いていく。



そして毎度シーンの最後に「何故そうなったのか」が判明する「インフィニティ・アハ」体験。例えば知らない人の死体があったとする。実はこの死体は◯◯が殺した✕✕だ、という“前の情報”が本作ではシーンの前ではなく“最後”に描かれるという、要は「毎シーンごとにドンデン返しがある」と同じことなのです??これがホントにすごいんですよね〜!!!おおそういうことか!!え、まさかそういうこと…!?しかも相手はノーランですよ?当然一筋縄ではいかない“騙し”がいたる所に散りばめられていて……でもそれを知るのは我々視聴者だけ。レナード本人は最後までそれに気づくことは出来ません。



「記憶」より「記録」に絶対的な自信を持つレナード。しかしその「記録」、本当に“100%信用できるのか?”___否、記憶が出来ないレナードにとって記録を“信用しない”という選択肢がそもそもないのです。そしてレナードは“記録のドツボ”にまんまと堕ちていく_。



ラストは数あるドンデン返し映画の中でも“トップクラスの衝撃度”を誇ると思います!!いやー初見で見た時は本当に開いた口が塞がらねぇ状態でした。本当に脚本がよく出来ている。神だわ〜まさに神映画ですわぁ〜(泣)しかも今回見て思い出したのですが、同じく似たような作りでやや説明不足の「フォロウィング」に比べて、ラストに結構“説明”してくれているんですよね。ですからノーラン初級編としては前作の「フォロウィング」より格段に本作の方がとっつきやすいのでオヌヌメだと思いますー。







 
【サクッとレビュー(ネタバレ)】




まぁ正直先にも書きましたが、観た方なら終盤で汚職警官の“テディ”の口から大体本作の“カラクリ”を説明してくれる親切設計ゆえ、オチネタの説明は……いらないですよね??



キャリー=アン・モス演じる“ナタリー”が彼氏をレナードに始末してほしくてする“小細工”、レナードが記憶を無くすまで車内でじっと睨みながら待つシーンとか何気にトリハダものだし、テディもレナードに手助けするフリして金儲けのダシに利用していたに過ぎないし…。



なんと言ってもこの映画は、もう存在しない“ジョン・G”を始末して運命に“勝利宣言”でもするかのように満足げに車を走らせるレナードが、いかに“周りの人間に踊らされていただけ”の、裸の王様のような哀れな存在であるか、そして彼が永遠に“どうあがいても「救われない」”ロジックにハマり続けることを意味する、彼の永遠に終わらない地獄を描いた非常に恐ろしい物語だと思んですよね。



妻を殺した犯人に復讐した“初犯”時にテディに撮られた写真に写るニヤついたレナードのその姿はまるで別人のよう。まさに「復讐が生きがい」だと言わんばかりな……。そしてその生きがいを失うわけにはいかないことに気づく。否自分のこの世の存在理由が犯人への復讐一択になっている以上、復讐を終えた自分にはもう生きる術がない。ここで「犯人を失ってはいけない」という逆の感情が生まれてしまう。そして彼はいつしか自分のこの世の存在理由を“永遠”にする為“永遠に犯人に復讐する”という悪魔のゲームを思いついてしまう。しかしそれは“永遠にクリア出来ない”地獄のゲームの始まりでもあった。己の意思と相反する己の存在理由。こうして彼の心が永遠に癒やされる日は消滅したのである…。

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