ウィッカーマン final cut(2013)
- 1 日前
- 読了時間: 6分

【原題】wicker man final cut
【監督】ロビン・ハーディ
【出演】エドワード・ウッドワード クリストファー・リー ダイアン・シレントほか
【あらすじ】
行方不明の少女捜索のためスコットランドの孤島に上陸したハウィー警部は捜査に取り掛かるのだが、島はサマーアイル卿が統治するケルト神話に支配された禁断の地だった。ロビン・ハーディ監督が未使用のフッテージも使用して再編集し完成させた。本編は88分公開バージョンより6分長い94分。(映画.COMより)
【感想(ネタバレなし)】

『ゲテモノ映画交遊録(前編)』
どーもどーもグラシネ池袋のIMAXシアターがプラチナ会員じゃないとほぼ100%利用できないじゃんと嘆く皆さまコンニチワー。ラーチャえだまめです。と言うわけで先週3連休の1発目、ほかどこか面白そうな映画やってないかなーとやってきましたよ目黒シネマ。

そんなに通ってはいない劇場なんですが、ココでは新作や新し目の作品より昔の名作(あるいはカルト)SFとかホラーをよく上映してくれるのでちょくちょく行ってます。やっぱり古き良きミニシアターは別格です。“体験型文化遺産”と言っていいのでは??先日世界の映画100選?日本からグラシネ池袋、新文芸坐、そして我らがハマッ子御用達のジャック&ベディ!!の3つが選出されたそうで。映画好きなら横浜観光に是非ともスケジュールに挟んで欲しい、ジャクベティはいいぞ〜。
……何の話だっけ。あ、ああゴメンナサイ!?でその日目黒シネマでは「ミッドナイトムービーコレクション」という(アメリカの深夜上映作品ばかり揃えたってこと?)週替りで属に言う「カルト」と呼ばれる作品を上映する企画をやっておりまして。そういや前回観た「ポゼッション」もこの企画の一つだったのかー。今回はその中から2本を選ばせていただきました(2本目は次回にて)
今回観たのは「フォーク・ホラーの元祖」と言ったらコレだろと【ウィッカーマン】!!日本では昔からカルト的な人気を誇っていましたがアリ・アスターの「ミッドサマー」のヒットで一気に知名度が上がった印象です。実は私学生時代に一度観てるんですよね。宗教系ホラーにハマってた頃。内容はほぼ忘れていたのですが当時観た「衝撃」だけは妙に記憶、というよりカラダが覚えていると言いますか!?そんなタイプの映画ってあるじゃないですか。今回の再鑑賞でその理由がよーくわかりました。

郵便局員みたいな警察官のハウイー巡査部長含めて「マトモ」な人間が一人も出てこないという!?イカれた「異教徒」を崇拝する小さな村。そこにいる人々は一見穏やかだがどこかズレている。でも彼らにとってはそれが“普通”であり“常識”。そこへジーザス異端者共よ!!とキリスト教的価値観を絶対とするハウイー巡査が乗り込んでくるわけですが——これが全く噛み合わない。むしろ観ているこちらの目には「村人たちの方が正しくて、ハウイーの方が浮いている」ようにすら映る。この構造がめちゃくちゃ面白い。よくよく考えれば、ハウイーの「キリスト教こそ正しい」という前提もかなり偏っているわけで、日本人的な感覚だと「なんでもキリストキリストって…」と一歩引いて見れてしまう。この“視点のズレ”を利用した演出が本当に巧い。1973年当時でここまで宗教そのものを「異様」で「無力」に描いたのは、かなり挑戦的だったんじゃなかろうか。

「あなたの“常識”は、ここでは“非常識”かもしれない。」
このテーマが全編にわたって突き刺さる。例えば、日本の「鬼わぁ〜外♪福わぁ〜うちぃ〜♪」だって、鬼の立場からすれば理不尽そのもの。それと同じで立場が変われば正義も常識も簡単にひっくり返る。多様性が叫ばれる今だからこそ、「そんな単純な話じゃないぞ」と突きつけてくるこの作品の視点は、むしろ現代的ですらあると感じましたねー。
物語自体も非常によく出来ていて。行方不明の少女の捜索から始まるミステリー要素。少女の写真を見せても皆口を揃えて「知らん」の一点張り。しかし詳しくガサを入れたら出るわ出るわ確かにこの村に少女が存在していた記録が。この違和感の積み上げが絶妙すぎる。そして終盤には、あのヒッチコックばりに“ちゃんと説明してくれるオチ”。初見でもしっかり「そういうことか!」と理解できる親切設計なのもポイントが高い。そして演出面。驚きなのがいわゆるホラー的な「怖がらせ」がほぼ存在しないこと。流血もジャンプスケアもゼロ。それなのに不気味さがずっと続く。むしろその“何も起きない”積み重ねが、クライマックスの衝撃へのフリになっている。気づいた時にはもう手遅れ、みたいな怖さがあるんでねすよねー。さらに「真っ昼間で怖い映画」の元祖とも言える映画で、日が灯るシーンなのに怖い。この感覚は「ミッドサマー」以前ならかなり異質だったはず。

それからこの村、とにかく性の喜びおじさんにも優しい性に対してオープンすぎるという!?「恥ずかしいことではなく自然の摂理」というスタンスで、外ではタケノコでも“使う方”のアオカン族が大量発生、村の学校の校庭では男子児童たちが男根!!フィーザキぃー!トゥーザティーサーザコンサァー!!なダンスを会得され室内では女子児童たちもダダンダンダン男根!!授業を受ける。安宿は売春宿の称号を与えられ宿娘は村の少年のバージンを美味しくいただきまーす!?童貞を襲うパツキン裸体美女のクネクネダンスの恐怖!?壁の向こう側でハダカの美女が壁をコンコンしながら誘う嗚呼俺には大事な妻がいるんだ……チェリーボーイだけど
現代の感覚だと完全にアウトなラインを平然と越えてくる。笑えるのか怖いのか判断に困る絶妙な不気味さで、これもある意味ホラーである。あと絶対に外せないのが、劇中で何度も流れる「フォークソング」。一見陽気で牧歌的なのに歌詞はどこか不穏。「明るい曲で異様な歌詞」このギャップが村の異様さをさらに際立たせていて、完全に作品の“顔”のひとつになっている。ちなみに今回観たのはファイナルカット版。画質はかなりクリアで未公開シーンを復元したバージョンとのこと。作品の空気感をより濃く味わえる仕上がりでしたねー。2006年には一度リメイクもされている本作。そちらは未見ですが「可哀想な顔」というだけでニコライ・ケイジが選ばれたとかないとか___?ウィッグつけて踊るクリストファー・リーが可愛いとか言ってる場合ではないクライマックスの来年の豊作を祝う「疑惑の5月祭り」。ラスト、あの夕日が本当に良い。「来年は豊作になるといいですね〜」なんて言いたくなるような、あまりにも皮肉で、あまりにも美しい締めやはりこの映画、“衝撃”が残る理由がちゃんとある。今回改めてそう確信できた、そんな1本でありました。




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