インビジブルハーフ(2026)
- 2 日前
- 読了時間: 7分

【原題】インビジブルハーフ
【監督】西山将貴
【出演】シエラ璃砂 奥野みゆ 平澤瑠菜ほか
【あらすじ】
ミックスルーツを持つエレナは、田舎町の高校に転校するがクラスになじめず、明るく話しかけてくる隣席のアカリにも心を開くことができずにいた。そんな中、スマホにつながったイヤホンを常に手放さないクラスの問題児・猫歌(にゃん)の死をきっかけに、エレナの周囲で奇妙な現象が起こりはじめる。イヤホンを通じて聞こえる足音と、スマホを手にしている時だけ見える「怪物」に常に追いかけられるようになったエレナは、やがて猫歌のようにスマホを手放せなくなってしまう。(映画.COMより)
【感想(ネタバレなし)】

『結論:イヤホンはやっぱり“線アリ”がいい。』
どーもどーもラーチャえだまめです。今時5台中4台が和式便所なのも珍しい今年9月末をもって閉館する横浜の老舗映画館、相鉄ムービルに先日行く機会があったのでお邪魔しました。ハマっ子なら一度はお世話になったことがあるのではないでしょうか。個人的には中学の卒業行事で何故かクラス全員で映画を観るという謎の暴挙に、それ以前にも小さい頃ここで色々観たなー、という思い出があるのですが。現在2階のチケット売り場でムービルの歴史がわかるブースに白壁に漫画家がらくが……描いたアート作品の展覧があったり“月刊コミックムービル”なるムービルを舞台にした無料のコミックが貰えたり、37年続いたムービルに有終の美を飾ろうという催しが行われているんですねー。そして我々映画ファンと致しましては、最後の最後まで“ココでチケット代を落とす”のがせめてもの努め!…というわけで来たわけなんですけども。今回ココで拝見させていただいたのはコチラ

【インビジブルハーフ】…!!??“和製「イット・フォローズ」”のタレコミでぶっ飛んで参りました。視認出来ない“ナニカ”の存在?「スマホを触っている時だけ」“ナニカ”が見える、「スマホのイヤホンをしている時だけ」“ナニカ”の“足音”が聞こえる。構想4年、総制作期間6年の歳月を費やし若干25歳の若さで完成させたという(ってポストカードの裏に書いてある)西山将貴監督による超絶インディーズホラー。そこまで多くない上映館の一つにムービルが入っていただなんて。しかも別に横浜が舞台の映画じゃないのに今週5日にトークイベントまで予定されてるってぇ!?(だから今猛スピードで書き上げている)この時点で気になっている方がいたら是非水曜日にムービルで鑑賞してみてはいかがでしょう!?
最近本当に“洋もの”っぽいインディーズのJホラー増えたよな〜(そして劇場で拝める機会も増えました)去年ヒットした「8番出口」だって(一応インディーズゲーだから…)作りからして洋モノっぽかったじゃないですか??今年観た「NEW GROUP」然り、邦画らしからぬ「奇抜さ」一辺倒……でもインディーズ、とりわけホラーというジャンルではそれが許されるというか相性がいいといいますか。そんなわけで本作もその例に習った

「こういう画が撮りたい」「こういう演出がしたい」先行投資型の意欲作、だったんですねー。
徐々に寄せてエレナの目がちょうど被る位置にタイトルをバンッと出して顔にかかったモザイクのように見せるOPクレジットも狙ったでしょ!?「シャイニング」ばりに校内の長い廊下、カメラアングルやセリフを発さず紙芝居調にして見せたり、実験的な側面もあったかもしれませんがあまり観たことのない演出をしよう、という強いこだわりを感じましたね。(明らかに「イット・フォローズ」の影響ウケてるのはわかりますが)西山監督は本作が長編デビュー作ですが、その前にYoutubeで短編ホラーを撮っていて、それが縦型マンガならぬ“縦型映画”というスマホ視聴専用(リンクはコチラです!)という、だいぶ異端児スタイルで伸し上がった実力者は折り紙付きと言うことですか!?
また監督のほか脚本・編集も手掛けていて、広く裁量権が与えられるインディーズだからこそ実現出来た節もあったかもしれません。邦画だと海外以上に映画の規模が大きくなればなるほど突飛な演出はやり辛くなりますからね。映画学校出身ではないらしい西山監督、だからこそ基礎から逸脱した奇抜な演出が出来たのかもしれません。

今やワイヤレスが主流のスマホのイヤホンであえて有線イヤホンを起用したのって一昔前のauのCMばりに相方と片耳イヤホンする青春のワンシーン撮りたいからだろ!!とツッコミたくもなるが、いやでも多分そういう“映画的な演出”の一つとして採用したのかな?やっぱりイヤホンは有線なんだよ(有線至上主義)見えない“ナニカ”の足音を聴くために中盤からエレナがずっとイヤホンするシーンが続くんだけど、イヤホン耳にぶっ刺した時のノイキャンめいたこもり音?あとつける瞬間のマイクがズレる音のような、我々視聴者もイヤホンしたエレナと同じ感覚になれるという?音響へのこだわりも感じられました。
主人公エレナ役に池田エライザ似の新人シエラ璃砂を筆頭に、親友アカリ役の奥野みゆ等、まだ無色透明なフレッシュな俳優を起用。そして謎の存在“ナニカ”ちゃんのビジュアル。正直最後まで画面に映さなくても良かった気もしますが、ミイラ男のような顔に服は……古着屋で揃えたようなカジュアルスタイル。透明化するエフェクトやイヤホンや机が宙に浮くVFXは低予算としては十分すぎる出来で、手掛けたのは西山監督の学生時代からの旧友“Cao Moji”というVFXアーティスト。実は本名佐藤昭一郎名義で日本映画になくてはならないVFXスタジオ“白組”に所属しているめちゃんこすごい人で、しかも本作に登場するエフェクトを全て一人で製作したとな!?(こりゃマブダチじゃなきゃ出来ない注文だ…)
学生時代感じた「疎外感」。自分には他者と比べて◯◯がない、◯◯で劣っている。「個性」と肯定的に認められる世界はまだまだ狭い。特にエレナやキラキラネームのイジメられっこのように外見的に目に見える“差”が原因で軽蔑されたりイジメの対象になることは容易に想像がつく。学校とは、“そういう場所”でもあるのが避けられない現実問題だと思います。
でも一度海外行くとわかるんですよ。「視線」なんて気にしたら負け、ということに。日本が特に他人の“視線”に敏感なのはもうお国柄のような気もします。大人の社会構造がそうなってんだ、その下の学生社会だってそれに毒されるのは必然。そして本作はそんな“視線”が生み出す恐怖を描いたホラー映画、だから本作は間違いなく“Jホラー”なのです。

担当するクラスで何か問題が起こってからやけに過敏になって個人面談とかやる先生、クラスにもいましたわー。だいたいそういう時は口聞かないんだけどね。「もっと大人を信用しろ」のコトバほど信用出来ないものはない……と当時のワタシが言っております(汗)
スマホ隠したイジメが原因でひと一人自殺に追い込んだのに、全く反省しないどころか同じ手を今度はエレナにするって人間のすることじゃないよね?加害者本人にはまるで自責の念がない、だからとあるシーンで心の底から「っしゃああああああああ!!」となるのは万人共通なんじゃなかろうか(もっと顔グチャ、でも良かったんやで?)
そんな早い段階から本作は主人公らが抱える問題が「疎外感」だったり「コンプレックス」「イジメ」、そして「イット・フォローズ」の“ソレ”が性病のメタファーなら、本作の“ナニカ”とはズバリ「自死」の具現化なのかなとも(ちなみにスマホというアイテム、学園、自死という要素は、西山監督の前作の短編とも共通していますね)わかってくるのですが、ちょっと色々詰め込み過ぎてなんか最終的に分かりずらい作品になっているのが勿体ないなーとも。“ナニカ”の存在のためにスマホが手放せなくなる→「スマホ依存」も一つのテーマとして入っているんだけど、それ一つだけでも1本余裕で映画が撮れるくらい大きな広がりを持つものだけに欲張りすぎな印象。また全体的にやや荒削りな部分も多く、あそこまで転校生エレナとの強いコネクトが生まれるまでに至ったアカリとの序盤の描写にもう少し尺を使った方が良かったとか、逆に歯切れの悪い長いシーンやエレナのセリフ回しがもたついているのが気になったり、悪い意味でもインディーズ感は拭えなかったかなと。
ホラー描写それ自体に特筆する要素もなく、ホラー映画だけど怖くないし流血シーンも(厳密に言えばあるんだけど)ショッキングな感じではないので、実はホラーが苦手な人にもオヌヌメ出来る仕様にはなっております。あとすごい気になったのがさ、エレナのねるねるねーるねの独特な食し方に母親との食事シーンで何故か一人鍋を割り箸で食べるのは、一体どういう意味が…??“ナニカ”の詳しい正体にその“ルール”すら後半意味を為さなくなるわ最後はアレックス・ガーランドの「アナイアレイション」ですか??ここでも“見せたい”が先行して作っている感じがありますね。アイデアはすごい良かったと思います。次回作ではその辺の投げた部分をもう少し丁寧に描いてくれたら化けるんじゃないかな〜。西山監督の今後のご活躍にも期待したい、今年大注目のルーキーがまた一人爆誕したかもしれません!?




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