ウトヤ島、7月22日(2018)
- ラーチャえだまめ
- 2019年3月12日
- 読了時間: 6分

【原題】Utøya 22. juli
【監督】エリック・ポッペ
【出演】アンドレア・バーンツェン エリ・リアノン・ミュラー・オズボーン ジェニ・スベネビクほか
【あらすじ】
2011年7月22日午後3時17分、ノルウェーの首都オスロ政府庁舎爆破事件が起き、8人が死亡する。さらに同日の午後5時過ぎ、オスロから40キロの距離にあるウトヤ島で銃乱射事件が発生し、32歳のノルウェー人アンネシュ・ベーリング・ブレイビクが、サマーキャンプに参加していた10代の若者たちを次々と殺害する。
【感想】

『手に止まった“蚊”はアドリブだカー?(えっ)』
どーもどーも北九州のお住いの皆さん、コップンカー。ラーチャえだまめでございます。今日紹介する映画は??
【ウトヤ島、7月22日】……いやー全く私的に似合わぬ映画を選んでしまいましたー。2011年、7月22日にノルウェーのウトヤ島という島で起こった無差別銃乱射事件を、生存者の証言に基づき制作された映画でございます。当時の事件の詳しい情報などは、正直各ブロガーさん、レビュアーさんが書いておりますし、ネットで調べて秒でわかることなので、ココであまり詳しい詳細は必要ない……ですよね?
事件発生から72分間を「ワンカット」で撮った、アルフォンソ・キュアロン的“サギ”は一切ございません!!笑「ワンカット」と言ったらそれこそ先日金ローでやってた「カメ止め」とかですよ(「ワンカット」…と聞いてソッコーで上田監督と本作のエリック・ポッペ監督との対談をさせる雑誌ガメついわぁ〜笑)個人的にはドイツ映画「ヴィクトリア」というワンカット映画としては史上最長?“140分ワンカット”があるのでそれほど“長さ”に関しては驚きはしなかったのですが
まあなんというか……終始“オープンしたマウスがブロック出来ねえ”状態
かなり“衝撃”を受ける映画ですよねー。なんというか“楽しい”映画では当然ないですよね。ヒジョーに“嫌な気分になる”映画です。ホントにいきなりですよ、はじめに同一犯による政府庁舎の爆破シーンが流れて(ホンモノの映像?)その後、同日に小さなウトヤ島でノルウェー労働党の青年部に所属していた10代〜20代の若者たちがサマーキャンプをしている最中ですよ?なんかあんまり美味そうにみえないピザ食ってる最中ですよ?いきなり“ズドーン!!”って大砲みたいなスゴイ音が聞こえてきて?なんだなんだみたいな感じで少しずつ周りがざわつき始めたら、森の向こうから人が全力ダッシュしてきて「逃げろー!!」って誰かが叫んで観ているコッチも「は?何?何何?なんですのぉ??」状況を把握出来ないまま、とりあえず身を隠せる建物の中に逃げ込んで……
“1銃声”につき“1恐怖”
こんな怖い事ある?本当に見ていて恐ろしかったです。しかもこの映画“犯人の姿がほぼ映らない”んです。ただ銃声が聞こえる“だけ”、これが“どんなに恐ろしいか”。完全に登場人物たちと一緒に逃げ続けているような錯覚に陥ります。反撃?ただひたすら“逃げる”のみ。全く素性も身元もダレなのかもわからない“誰か”から「殺されたくないから逃げるしかない。」……こんな恐怖あります?これが“テロ”の恐怖かぁ……殺人鬼による“ホラー映画の恐怖”ではない、実際“こんな事”が起きた時、「実際に感じる恐怖」って、こんなに恐ろしいのかと……。そしてその後感じたのが
“犯人”そして“事件そのもの”に対しての猛烈な「怒り」
なんでこんな事になってしまったんか。。。。どうして罪のない若者たちが平然と撃たれて死んでいくのか。「怒り」ですよねー。本当に……「怒り」だなー。
う〜ん、こーゆー系の映画(実際にあった事件・事故・自然災害等扱った映画)って、特にこの無差別銃乱射事件、69人もの若者が亡くなっているわけですよ(その前に同一犯による政府庁舎爆破事件で8人死亡)
“面白い”とか“面白くない”から“観ない”っていう次元じゃないと思う
個人的にはこーゆー映画は“観なきゃいけないもの”だと思っているのです。勿論この映画に対して批判的な意見、エンタメ要素はないにしろ“エンタメ色の強い”「映画」という媒体を使って表現・見せることは如何なものなのか、そんな意見もあって当然だと思います。
でも私は「映画きっかけで」知る?現に私はネットのニュースで知っていたくらいの知識、スッカスカのポップコーン並に日々スッカスカの人生を生きる人間ですので、この事件をあまり詳しく知りませんでした。でもやっぱりこの映画観たら
ネットでも何なり調べて“知ろう”ってなる
それが一番大事な事なんじゃないですか。だからこの映画は“肯定”は出来ないけれども“なくてはならない”映画だと思うのです。肯定は出来ません。だって肯定してしまったら、事件が起きる事も肯定したことになりませんか?この映画が“制作されなかった事に、越したことはない”、でも事件が“起きてしまった”、だから“存在しなければならない”、それは別に映画じゃなくてもいいですよ。ただ、「映画」にすることで、より身近に、かつ誰もが、カンタンに事件の事を知ることが出来る(詳しい詳細とかはまた別として)そして「映画」はDVDとかデータとかに残りやすいじゃないですか?だから私はこーゆー悲惨な映画とか、ドキュメンタリーとかどんどん映画化してもいいと思うんですよね。当然被害者等を考慮されたものでなくてはなりませんが
ただねー、1点だけどうしても納得いかなかったのが「ラストの展開」なんですよね…。
あの展開がヒジョーに「ドラマティック」といいますか、登場人物、ストーリーは全てフィクションです、とテロップが出てきますのであの展開は完全に製作者たちによる“創作”だとした上で、じゃあなぜあそこまで悲惨な展開にする必要があったのか?“リアリティ=悲惨”では絶対ないと思うのですよ。リアルを追求したから?まさしくこの映画のラストは“映画みたいな展開”なのです。でも「それいる?」っていう、あのラストで私は
この映画は結局“再現”がメインなのか、“映画的なもの”がメインなのかがわからない
ラーチャ、あなた疲れてるのよ…スカリーに言われそうなだんだん自分でも言ってることがよくわかんなくなってきましたがこの映画で犯人がライフルで“撃った回数”と実際事件で犯人が撃った回数が完全に一致していたり、先に言った実際に事件が起こった72分間という時間を、そのまま本編の長さにしている点からも、事件を忠実に再現しようとしているわけです。だったら「映画的な展開」なんて本来必要ないじゃないですか?そこがねーエンタメに寄せたいのか、寄せたくないのか、本作を「POV視点のパニック人間ドラマ」として作りたかったのか、それともただ事件の当時の“ありのまま”を、ただ我々に見せたかったのか……そこだけが引っかかってしまいました。
ちなみに同事件を描いた映画がもう一つあって、「ボーン〜」シリーズやアメリカ同時多発テロでハイジャックされたユナイテッド航空93便を描いた「ユナイテッド93」などのポール・グリーングラス監督による「7月22日」という映画が、ネトフリで配信されておりますがコチラは本国ノルウェーではネトフリが「金儲けの為に作った」として賛否両論あったんだとか。ポッペ監督は本作を通して事件の何を伝えたかったのか〜ではなく、あくまで“問題定義”に留めております。事件から8年経った今も、被害者たちは苦しめられている。犯人支持者による“脅迫文”が送られて来ているのです。この事件はまだまだ解決していない、“終わっていない”大きな問題だと知り私は改めてショックを受けました・・・。
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