1917 命をかけた伝令(1917)
- ラーチャえだまめ

- 2020年2月16日
- 読了時間: 8分
更新日:2020年2月18日

【原題】1917
【監督】サム・メンデス
【出演】ジョージ・マッケイ ディーン=チャールズ・チャップマン マーク・ストロングほか
【あらすじ】
第1次世界大戦が始まってから、およそ3年が経過した1917年4月のフランス。ドイツ軍と連合国軍が西部戦線で対峙(たいじ)する中、イギリス軍兵士のスコフィールド(ジョージ・マッケイ)とブレイク(ディーン=チャールズ・チャップマン)に、ドイツ軍を追撃しているマッケンジー大佐(ベネディクト・カンバーバッチ)の部隊に作戦の中止を知らせる命令が下される。部隊の行く先には要塞化されたドイツ軍の陣地と大規模な砲兵隊が待ち構えていた。(Yahoo!映画より)
【感想(ネタバレなし)】

『じゃない件』
どーもどーも昨晩花粉症で鼻水が止まらず丸めたティッシュを鼻に突っ込んだまま寝たら死にかけましたラーチャえだまめです。「一寸先は死」____新型コロナウィルスで騒がれている現代より日々「生か死か」の選択を迫られし緊迫した時代があった………【1917 命をかけた伝令】。

いやー先週のアカデミー賞で撮影賞含む三冠を制した、まあ何かしら賞は取るだろうな、というメディアでも結構アカデミー最有力候補だと言われていたコチラの作品。ちょっと前に日本でも公開された「ブレインデッド」ではお母ちゃんを蘇らせるのに失敗したピーター・ジャクソン監督が100年前のフィルムをスクリーンで蘇らせる事に成功したドキュメンタリー映画「彼らは生きていた」で当時撮影された時代がちょうどこの頃だった、そう舞台は第一次大戦時。その時代を生き、前線に進行中の1600名の兵士を敵ドイツ軍の奇襲から救うべく「撤退命令」という伝令を、命をかけて届ける任務を任された歴史上「名も無き」ある二人の兵士たちの活躍を全編ワンカッ

間違っても宣伝でウソ言っちゃあアカン国日本!?いやあくまで“フカヒレ風”が本物のフカヒレじゃない事と一緒!!“ワンカット風”の映画である事をまず皆さまにお伝えしなければなりません!!アルフォンソ・キュアロン作品のようにうまーく編集点を誤魔化しさも“繋がっているような”アナタとワタシの妄想だけでは成し遂げられない卓越された技術により生み出された連結型映画、だったんですねー。

お話は非常にシンプルであります「伝令を届ける」ただそれがものすげぇー大変な事なのは観なくてもお分かり頂けるかとは思いますが、いやーOPからもう始まる「臨場感」。カメラは木陰の下で寝転ぶ将兵のウィリアムのアップから始まります。その後将軍から呼び出され相方のトムと共に将軍に連れられて二人で基地まで、たわいもない話をしながらトボトボ歩き出すと同時にカメラも2人を映しながら同じく移動、基地に入り将軍から任務を言い渡される場面もバッチリカメラに収められております、こうやって“繋ぎ目”のない映像体験は今に始まったわけではありませんが、なんだろうな、これを戦争映画でやると……任務を受けるところから「さあでは行くぞ」って流れがとっても“ゲーム”っぽい。もっと言うと「バトルフィールド」や「コールオブデューティー」みたいな戦争ゲームの、いわばムービーからそのまま直結してプレイ出来るみたいな

FPS(一人称視点シューティング)ゲームみたいなノリ
だなー、そんな印象なんですよね。いや別に悪くはない、悪くはないのですが“プレイする映画”の如くウィリアムとトムが行く先々でトライしなければならない関門という名の「ステージ」を一つ一つ「クリア」して行く感じで映画が進むんですよね。その辺も含めて想像以上にとってもゲーム的な映画だな、いやと言うか今流行の“POVショット(主観ショット)”的とも言いますよね。まるで視聴者もウィリアムとトムの後ろからずっと付いていっているような……そんな感覚さえ覚えてしまいます。…という当初抱いていた戦争映画特有の“お硬い”イメージというよりは、それこそ「ダンケルク」のような(あれも“戦争映画”ではなくあくまで“タイムサスペンス”だと監督が言っている…)サスペンス要素のあるアトラクション系映画みたいな、そんな気がしますねー。
それゆえ話の展開的には正直なところ“ちょっと無理がある”といいますか“映画特有なネタ”があって、まあ現実は小説より奇なりとは言いますが……(この辺はネタバレで解説します)リアリティに欠ける部分もあってそこら辺がちょっと「う〜ん。」となる方もいらっしゃるかと思います。ただ、個人的にはお話うんぬんより

“映画史に残る”名シーンだけでなんかもう大満足
もうこの映画の半分以上が撮影監督である“ロジャー・ディーキンスによる功績があまりにも大きい”いや個人的には「スカイフォール」でもタッグを組んだ監督のサム・メンデス以上だと思いましたね。まさにこのロジャー・ディーキンス監督じゃなければ“撮れない”ような、IMAXギガ対応の超ハイスペックな“映像世界”、特に上の1枚目なんて「え、これ本当に地球?」という発煙筒から映し出される世界、それが崩壊した瓦礫の山さえ“異世界”じみて見えてくる、まるで地球ではないどこか遠い遠い遥か彼方の別の惑星で撮られたような、そんな錯覚に囚われてしまうとても幻想的なワンシーン。いやぁ〜このシーンはこれまた別の惑星に到着した際に流れるみたいな壮大なBGMと共に画面に映し出された時はマジでマインドが唸ったよな〜。もう一つのシーンもCMでも流れますがウィリアムが爆撃と兵士たちの突撃の中ヨロヨロとした足取りでそれでもまっすぐ前を見ながら歩き続ける、これまた非常に印象に残る名シーンでしたね〜。この映画は本当に“画”になるシーンが多い。故に大きなスクリーンで見ることを激しくオヌヌメ致します。
【感想(ネタバレ)】
ホラー映画で残酷な死に際は余裕で拝めるのに戦争系と医療系で人が苦しみながら死ぬシーンだけは胃が「う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛」となりますラーチャえだまめです。いやあのトムの死に方はねぇだろ〜(笑)そんな下手に敵さんを助けようとするから……あああああああイワンコフない!!!という非常に見ていて残念&非情なシーンだなぁ…なんて思ってしまいました。しかも腹から血をドバドバ流しながらみるみるうちに白化粧したかのように顔が青白く衰弱していくトムの最期までカット無く見せ続けられたのは、かなりの苦痛でした……。
ただ“そうでなければいけない”んですよね、戦争の悲惨さももちろんそうですが、“トムの死”という悲劇があったからこそ、見た方なら気づくと思いますトムが死ぬ前と死んだ後でウィリアムの中で明らかに“何かが変わっている”ということを____。

ウィリアムを演じるのは子役から活躍しているジョージ・マッケイ。この人「マローボーンの掟」で初めて見たんだけどファンの人ゴメンナサイ正直ね「え、コイツが主人公?」って感じなのよ(笑)なんか特徴がないっていうか、ひょろっとしているっつーか弱っしいっていうかロリー・カルキンみたいに血の気がないっていうか…(笑)顔もそんな……まぁ“THE普通”って感じで(ただの悪口やないかい笑)それがむしろ本作では“それが物凄く合っている”というか?上にも書いた序盤は「名も無き兵士」A、Bの「B」みたいな、むしろ前線にいる兄貴を助けようとするトムの方がはじめはどちらかというと主人公みたいじゃないですか?ウィリアムはその後ろにただずっと付いていってるだけで、時より弱音は吐くわ開始早々有刺鉄線で手怪我してしかもその手を死体に突っ込んだりする鈍くさいヤツやな〜、えその怪我が腐ってコレもしかして死ぬフラグじゃねえだろうなー!?…なんて勝手に思ったりww
それがトムの死後1,600人の兵士の命を救うため、そしてその任務を共に受けた“トムの想い”を兄貴に届ける為、もうウィリアムの目の表情が明らかに変わるんですよね。そして終盤にはこの物語の主人公が完全にウィリアムである、とまで言わしめられるかのようなその変化をジョージ・マッケイは見事に演じていると思いましたねー。
そして彼がイギリス人俳優なのもそうですが、その脇を固めるコリン・ファース、マーク・ストロング、ベネディクト・カンバーバッチ……“オールイギリス”で固めた布陣ですよ。皆それぞれ出番は少ないものの大御所として抜群の存在感を放っていましたねー。マーク・ストロングが「過去は振り返るな」みたいなこと言うシーンあるじゃないですか?あれは戦場で散っていった仲間に囚われて士気が下がらないように、という戦の心得みたいな意味合いもありそうですが、何より「過去を振り返らずに“今を生きろ”」“生きろ”という事も伝えたかったのではないか、そのあといつ地雷踏んでカントリ〜ロ〜ド♫歌ってくれるのか待っていたのでs

ラスト木の下に座り込むシーンでOPとENDが綺麗に“繋がる”あの演出も好きですね〜。ただ2つのシーンで明らかに違う所がありますよね、そう、それは“隣に相棒がいない”という事なんだよな……
そしてウィリアムはポケットからおもむろに母親の写真を取り出します。裏には“生きて帰ってきて”と書かれたメッセージが。彼はそこで改めて“生きよう”と決意したように私には見えました。トムという“命の恩人”を失っても、大事な仲間を失っても、それでもこの戦争で生き残ってやろうと、そんな“生きる”という何度も使い古されたテーマではありますがそれでもやはりどこか現代にも“繋がる”そして非常にマインドに“響く”ものがありますよね____。




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