エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022)
- ラーチャえだまめ

- 2023年3月12日
- 読了時間: 7分

【原題】Everything Everywhere All at Once
【監督】ダニエル・クワン ダニエル・シャイナート
【出演】 ミシェール・ヨー キー・ホイ・クァン ステファニー・スーほか
【あらすじ】
エヴリン(ミシェル・ヨー)は優柔不断な夫ウェイモンド(キー・ホイ・クァン)と反抗期の娘、頑固な父と暮らしながら、破産寸前のコインランドリーを経営している。税金申告の締め切りが迫る中、エヴリンはウェイモンドに並行世界に連れて行かれる。そこでカンフーマスターさながらの能力に目覚めたエヴリンは、全人類の命運を懸けて巨大な悪と闘うべく立ち上がる。(Yahoo!映画より)
【感想(ネタバレなし)】

『マルチバースのMISIAですか?』
どーもどーも源泉徴収票をなくし確定申告が出来ないラーチャえだまめです。本日はそんなコインランドリーを一家で営む個人事業主の確定申告の間に「マルチバース」の扉が開いてしまった

【エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス】!!!なげーよ!!いやーついに先週より日本でも劇場公開された今年の「大注目」作品!?……いよいよ来週13日に開催される“第95回アカデミー賞”最多部門候補作品として既に世界でも話題沸騰中と言うことで??長い物に巻かれたがり屋の日本メディアも当然TVCMなどバンバン展開して長くて覚えにくいタイトルならば「#エブエブ」……なんて言っちゃダメ!?そんな軽いノリで観る分にはいいが倍速視聴者じゃなくとも“倍速視聴しているかの如く”の「ハイスピード“マルチバース”」とか何がなんだかワケワカメな目ん玉まんまるになっちゃうんだからああー!?

ちょっと「こんな映画観たことない感」が凄い。
正直言って「ジャンル不明」__否、様々な要素が交互にDNAの如く乱立しあい今回かなり期待値アゲアゲでいったつもりが想像の遥か彼方銀河系の惑星マンダロアにブッ飛ばす勢いで「圧倒的“圧倒”」脳みそ打ちのめされてしまったと言いますか
「マルチバース」×「カンフー」……そう簡単に言えるのはあくまで今作の表面的な「ビジュアル」だけで、中身はとてつもなくぶっ飛んでて理解に苦しむ難解不明な映画……なのだけれどもその根底にあるのは「愛する人(夫・娘・父親・恋人etc…)へ「アイ・ラブ・ユー」」という永遠不滅のテーマという……!?これはヤバい。語彙力がないから上手く言い表せないのが悔しいがとにかくヤバい。

A24!!またお前かああああああああ!!!!!今年もうなぎ登りの絶好調スタジオ「人で例えたら志茂田景樹だと思うの」ことA24スタジオがまたしても登場。もうそれだけでも観に行くって言うのに…!!!物語は家族経営のコインランドリーを営むエヴリンが今日も朝からセカセカセカセカ……能天気な優男な夫ウェイモンドと反抗期の娘ジョイと車椅子のボケ親父たんすにゴンゴンその他大勢の客を聖徳太子並に一斉に相手しながら今日も忙しなく動く動く動く……この“いつもの何気ない日常”が「忙しない日常」だとすぐにわかる、序盤からこの映画のテンポ感を我々視聴者にここでもう意識させる演出、流石ですね。そして今日は確定申告で税務署に行かなくてはならない大事な日。言うこと聞かない娘は置いといてウェイモンドとゴンゴンの3人で税務署へ向かうのですが……
ベーター内でいきなりウェイモンドの様子が激変し「別の宇宙(ユニバース)から来た」と意味不明なことを告げられた後謎のワイヤレスイヤホンをつけられたらゆゆゆゆ幽体離脱〜みたいに“別アース”に飛ばされてしまうエヴリン。一方そのころ“現アース”でのエヴリンは税務署の担当ババロアからノリでカラオケBOXを経費で落としたことを猛烈にツッコまれているがそんなことまるでアタマに入って来ませーん。監督は「スイス・アーミー・マン」のダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート。同じ名前で妙なシンパシー感じちゃったからって

ダニエル・ラドクリフを“水上ゾンビボート”にした監督のやることなんて意味わかるわけないじゃああああああああ!!!!
いやーもう終始「この先読めない」展開アリストテレスすぎて理解が追いつかない。唯一無二の“特性が強すぎる”世界観。まず「マルチバース」という単語が脳内にすんなり入って来なければ難しいでしょう。今作に登場する世界線は同じくマルチバースを扱う他作品でも未だかつて観たことがないものばかりで「んな世界線まであるのかよ!!」と思わずツッコミが止まらない。MCUのジョー・ルッソ&アンソニー・ルッソが製作に名を連ねているからか、今作は「難解だけでトンデモなくストレスフリーで観れてしまう」テンポの良さ&大胆でアクロバティックなアクション、というルッソ兄弟の持ち味もひと味噛んでる気もしましたねー。
そしてそのアクション、というのが「カンフー」。ゴメンナサイ私カンフーは五星戦隊ダイレンジャーくらいしか縁がなくて今作の「オマージュ」に気づくことは出来ませんでしたが、ドタバタ人情劇→唐突の「マルチバース」→唐突の「カンフー」の流れがもう意味わからん!?

「え、なんでそうなる?」という一見すると全く相反する2つのジャンルがありねぇー程はんぱぁーな夢のひとかけーらがぁー不意に……間違えた“ケミストリーしている”という!?しかもそこら辺のアクション映画より“めちゃくちゃ凄えアクション”してんじゃん!?この一切抜かりないアクション映画としてもレベルが高い、いやウェイモンドもスタント顔負け……て「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」「グーニーズ」に出演した人気子役が俳優業から裏方に回りアクション監督として活躍したあと実に38年ぶりに今作で俳優復帰したキー・ホイ・クァンだから当然っちゃあ当然なのかもしれないし今年度アカデミーの助演男優賞候補と呼ばれるのも納得の「演じ分け」もお見事でしたね〜!
あと個人的には「マルチバース」×「カンフー」ときて×「マトリックス」の要素も入ってたと思いました!!「リザレクション」これで良かったんじゃね……?つまり「マトリックス」好きならどハマりする危険性。「“突拍子もない行動”がマルチバースの“神経”と繋がる」という設定がこれまた面白い。例えば手から波動拳が撃てる世界線にいる自分の記憶とリンクすれば現世界線でもそのワザが使えてしまうということ!!そしてそのトリガーが渋谷のスクランブル交差点の中心で野糞するっていう具合よ!?だからここでもキャスト達が「え、なんでそうなる?」っていう行動をしちゃうワケ!!製作陣もよくこんなトンチンカンな行動思いつくよ……(汗)
そしておまんたせしました主人公エヴリンを演じたミシェル・ヨーの「御本人の“これまでのキャリア”を振り返りましょう」という実は“誰よりもミシェル・ヨー映画”だったという…。
これも先に言ったカンフー映画に精通しているか、彼女のこれまでのキャリアを知っているのと知らないとでは今作の理解度が格段に変わって来ると思いますねー。まさに“ファンMOVIE”としての色味も強い、ミシェル・ヨーもまた様々な“バース”に存在してカンフーを極め霧がかった怪しい森の中で永遠の鍛錬を送る人生もあれば女優として成功しカメラのフラッシュを浴びる毎日を送る人生も……なんてアクション俳優と演技派女優の枠を行ったり来たりしていた頃の彼女のリアル人生そのものじゃん!?と知ってる方が観れば楽しめるわけです。今作を観る前に彼女のこれまでの出演作をあらかた抑えておく、というのもイイかもしれません!

まあ彼女をことをよく知らないよ、という方でも大丈夫。さらにもし夫の“ウェイモンドと結ばれてなかったら?ver”の人生はどうなっていたんだろう、あの時“親父の反対を押し切っていなかったら?”とか、人生って無限に選択肢があってその都度物語の分岐点があって死ぬまでそれが「最善の選択だったか」なんてわかりませんよね?人生は後戻りできない一発勝負、でも「マルチバース」なら…?つまり無限の選択肢から「最善」を選ぶことだって出来るんじゃね?
けど今作は「“今あるバース”でより良く行きていけ」という深いメッセージが込められていると思いますねー。エヴリンは今の現世界線の自分が“最も能力値的に低い”バージョンだとウェイモンドから告げられてしまうのですが……
逆に(アタマが空っぽだから??)ある意味“無限の可能性”を秘めているバージョンでもあるわけで、だから「キミにしかマルチバースを救えない!」とウィモンドから未来を託される。今の世界で人生が上手くいっていなかったとしても、きっと別バースの自分は輝いて生きている、そう思えば今の世界でも頑張れる気がしませんか?今作はそんなポジティブになれる映画でもあるのです!
そして詳しくはネタバレになるので控えますがエヴリンは反抗期を迎える娘のジョイとあまり関係が上手くいっていないビミョーな親子関係。ですがエヴリンが「“理解し合える別バースのジョイ”じゃなく“上手くいっていない現バースのジョイ”」をギュッと抱きしめるシーンがね、もう最高にホッとな瞬間だぁ〜!!様々なバースの「大切な人」を見てきたからこそ「今“目の前にいる大切な人”へアイ・ラブ・ユーを送ろう」……どのバースでもない「今」いる人を大切にしよう、という結論に帰する映画だから素晴らしいんですよね!LGBT等差別も反対!皆を愛そう!!まさに愛に満ちた映画でもあるという……欲張りすぎだぜエブエブ!!




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