サブウェイ(1985)
- ラーチャえだまめ

- 2020年4月26日
- 読了時間: 9分

【原題】Subway
【監督】リュック・ベッソン
【出演】クリストファー・ランバート イザベル・アジャーニ リシャール・ボーランジェほか
【あらすじ】
金髪に黒いタキシード姿のフレッド(クリストファー・ランバート)は、大富豪の美しい人妻エレナ(イザベル・アジャーニ)に招かれたパーティーで重要書類を盗み出す。男たちに追われてパリの地下鉄の下、地中深くにある地下溝に逃げ込むフレッドだったが、そこにはボディービルに励む怪力男など風変わりな若者たちが生活していた。(Yahoo!映画より)
【感想(ネタバレなし)】

『チラ見の流儀』
「上をむいて歩こう」の歌があるように何事も前向きに捉えることも大切なことですよね

上を向き過ぎました
どーもどーもラーチャえだまめです。そんな何事も“前向きに”というか光届かぬアンダーグラウンドの世界で明るく元気に「自由を生きた」ある奇想天外なヒューマンたちの織りなす壮大な喜劇、今宵ご紹介したいのはコチラ、【サブウェイ】。
ずっとずっと前から観たかった1本。以前は巷でなかなか手に入らない代物だったのが、最近再ソフト化されたらしく配信サービスにも入っていたのを発見してようやく観ることが叶いました。いやーなんと言ったらいいのか

どうして初期の彼はこんなにも面白いのだろう?
幸せな偏頭痛に襲われてしまう我らがリュック・ベッソンの名を当時若干26歳の若さで世界に知らしめた出世作であり名作、、、、とまで言われている本作でありますが、いやこれまで「グラン・ブルー」「ニキータ」「レオン」(あと個人的には「フィフス・エレメント」も添えたい)2000年台までの彼の作品は全て観たわけではありませんが少なくとも先に上げた作品全て「パーフェクトに面白い。」作品を世に生み出してきたと豪語しても嘘偽りない事は言うまでもなく?正直最近は「自分の過去の名作を自分で二次創作してる感じ」にしか見えない作品が多いのが非常に残念でなりませんが、しかし未だに「制作は“あの”リュック・ベッソン〜」と大々的に宣伝の謳い文句として彼の名が使われ、そしてそれを聞いた人々が劇場に足を運ぶだけの効力を持つ「“駄作”を生み出せる程に“名作”を生み出してきた男」それがリュック・ベッソン……そんな彼の記念すべきデビュー作【サブウェイ】

OPから“もう面白い”
タキシード姿のパツキン野郎が今はなきカセットテープを車用カセットデッキにINしてジャラジャラと音楽を流しながらノリノリで車のハンドルをきる

“後ろに追手がいるのに”である
早くも「トランスポーター」の片鱗が垣間見れるパリの市街地を爆走してそのまま駅にドッカーン(以降この事故については一切語られないのはご愛嬌)スケート野郎と“名無しのドラえもん”こと若かれし頃のジャン・レノ演じるドラマーが地下鉄の通路でハイタッチ→からの横から金髪野郎が登場するこの完璧なまでの“タイミング”の妙を観てしまうだけで勘の鋭い方ならばもう「あ、これは面白いな」とため息せずにはいられない「カメラワーク」を遊ばせたらピカイチのリュック・ベッソンの才がやっぱり今作でも大爆発しているんですねー。

物語は金持ちが主催するパーティーで多額の金と引き換えに“重要な書類”を盗んだパリの大泥棒、金髪頭のフレッドが追手から逃げ込んだ地下鉄で出会う、色が濃すぎてリトマス紙を全部真っ黒に染めあげる程の個性豊かな住人たちと交流を深める中、金持ちの妻…というより娘ほど年の離れたエレナが拳銃をバッグに忍ばせフレッドから盗まれた書類を取り戻すべく彼の潜伏する地下鉄にやって来ます。しかし彼を追っているのはエレナだけではなく……
フレッドを演じるのはトーマス・ジェーンにか見えない「ハイランダー」のクリストファー・ランバート。この頃はイケイケドンドンだったんですかね?ほかにもエレナ役にはフランスを代表する名女優イザベル・アジャーニ、「ニキータ」の彼氏でもあるジャン=ユーグ・アングラードがスケート野郎を熱……えローラーっていうの?
パリの地下鉄には駅長室のほかに交番も入っているんですね(そりゃ駅に車ごとツッコむ人もいるからねぇ…。)本作に登場する地下鉄はまさに“ひったくりの宝庫”で地下鉄を根城にしている住人たちは駅を利用する乗客の物を盗んだり終電後の誰もいなくなった駅ナカの店から食べ物や酒を好きなだけ盗んで暮らしているんですね。いやむしろそれが“日常”みたいな認識なのか?アメリカに行った時も感じましたが日々安心して利用出来るのは日本だけなのかも…。

地元警察VS地下鉄の住人との“追いかけっこ”にさらに新顔フレッドが加わったことで金持ちの子分までもが“彼の命を狙う”為に地下鉄にやってくる事態、というまさに“ドタバタ劇”がコメディタッチで展開されてしまいます。前述したスケート野郎に素手で手錠を破壊する筋肉バカに怪しい花屋などそれだけでも面白いのに、出されたコーヒーに砂糖入れてとっさに机にあったペンでかき混ぜるエレナの動作とか、そのコーヒーを出した警部の部下は駅長に「おいボスはどこだ!」「いないね。警部ならいるが…」と言われた後スタスタぁ〜とどこかに消えていくアンポンタンなところとか、ワンシーンワンシーンが「完成され過ぎたコント」過ぎて脱糞、いや脱帽でございます。アナタがもしこれから本作をご覧になろうと思っているのなら、最低一つは「好きなシーン」に出会えるのかもしれません??
またたとえ何でもないシーンですら、たとえば警官の大群が地下鉄にズラズラ入っていく、たったそれだけのシーンなのに彼の手にかかれば軽快なBGMとどこか“オサレ”感アリストテレス漂うシーンに早変わりするのは「マージーカールーバナナ♫リュック・ベッソンと言ったら、、、エリック・セラ〜♫」が成立してしまう程ベッソン作品には無くてはならない一人、音楽家のエリック・セラだからなんですよね。ちなみに本作ではベーシストの“エンリコ”という地下鉄に住む住人の一人として顔を拝むことも出来ます。

ドタバタ劇が楽しめる一方で、物語のメインとなるのはフレッドとエレナの「ラブ・ストーリーは突然に」展開も非常に目が離せないところでございまして、エレナの幼い写真を見ながら夜中の3時に駅から電話して「キミの名前知らんけどキミが好きだ。」とか言っちゃうフレッドの破天荒過ぎるプレイボーイ姿にエレナのマインドも次第に揺れ動いてしまうという、盗人が盗んだ金持ちの妻(娘)のココロも盗むなんてフランス版ルパン過ぎるだろ!?まぁ、既婚者のエレナがフレッドに恋をするのには彼女の生い立ちが関係しているんですけど…。
やっぱり素晴らしいシーンしか思いつかない、終始骨の芯まで「面白い」と胸を張って言える作品はなかなかそう多くは出会えないとは思いますが、本作はその懐に充分食い込むだけの価値は大いにあるかもしれませんねぇ。
【感想(ネタバレ)】
地下鉄を探索中、ふと見つけた金庫を次のシーンで部屋ごと爆破する「欲しいものは欲しいのだから手に入れる」というジャイアリズムさえ通用させるフレッドの「自由人としての生き方」。

彼は過去に声帯を一生失う可能性もあった大きな事故に遭いバンドを組む夢を捨てました。しかし地下鉄で彼は偶然にも地下でひっそりと日の目も見ずに活動するバンドを見つけ、そこで“プロデュース”の立場で彼らに自分の作った曲を演奏させ、それを大衆の前で披露することを思いつくのです。この「突きつけられた現実」に抗う姿、彼の「自由力」という力の前では彼を止めようとする存在は全て無力である、というこの清々しい程に「自由人」として生きるフレッドに人としてめちゃくちゃ魅力を感じてしまいました。
エレナはまさにそこに惚れたわけで、お金持ちと結婚し裕福な暮らしを得ましたが、その代償に「自由」を奪われてしまった元団地の貧乏娘のエレナが、自分とは対照的な生き方をする彼の虜になってしまうのは非常に納得のいく話。まさに逆シンデレラストーリー。しかし二人の恋は唐突に終わりを迎えます。ラストはちょっぴり切ないのはベッソン作品ではお約束なのでしょうか?なんとなくこの後死ぬんだろうな、とは思っていたのですが、やっぱりそうは問屋が卸さなかったね・・・。マチルダがレオンの鉢植えを土に埋めたり、逃亡したニキータを追ってきた元上司がニコッと笑う、海に帰っていくバカ彼氏、、、、、ベッソンの映画は何故かラストシーンがとっても強烈に記憶に残るパターンが多い。今作もまさにそうですよね。

ただ評価したいのは本作のラストが「哀しげな」だけで終わらせなかった点。一瞬ポクリと死んでしまったかと思いきや、またふっと目を覚ましてバンドが演奏する軽快な音楽を口ずさんだところでエンドロールに持っていく、これには唸ってしまったな〜。
おの幕の降ろし方は、あの後彼が“本当は助かったのか”とか“やっぱりあのまま死んでしまったのか”とか「どちらともとれるEND」を意図している、というよりは「彼らしい」最期、いや「この映画らしいラスト」という感じで、哀しみだけでは終わらせないそこからまたちょっと喜劇に戻って終わる、という演出がサイコーに決まっているというか、そうまさに「生き死にもフレッドが自由」に操っているみたいな?いやあのラストしか逆に考えられないんですよねー。
そんなフレッドや地下鉄の住人たちを見て「もう少し自由に生きてもいいんじゃないか?」と、ふと思ってしまったんですね。それは規律を守らずに自由に行動すること、じゃなくて「自由な気持ちになっていい」というか、今まさに誰もが辛い想いをしているこの世の中だからこそ、ちょっと肩の力を抜いて「自由」に生きてみませんか?

例えば少しの間だけでも「楽観視」してみるとか?例えば外出自粛の期間を自宅で新しい趣味を始める「きっかけ」と捉える「自由」とか、「え、てことはずっと家に篭って好きな事に没頭出来るじゃん!」と「ときめく自由」があってもいいんじゃないか?そんな事をふと考えさせられたんですね。周りがみんな辛い想いをしているからって、自分もそうならなくてはいけないなんて事はないじゃないですか?そこに同調して滅入る必要は全くないわけですよ。ずっと深刻に考えたからって世の中が良くなるワケじゃない。むしろ「後ろ向き」な姿勢ではなく「前向き」な姿勢で物事を少しでも考えられたら、これほど素敵な事はありません。
せめて「気持ち」だけでももっと楽〜にしましょう。そうやって自由にさせてやった方がストレス軽減にもなるし、生きやすくなるんじゃないかな。いい意味で「現実から少し目を背ける」生き方。今だからこそ大切なことだと思います。まぁそれが私は「映画」なんですけどね…。




智広さん リュックベッソンはフランスの巨匠ですが、これは私個人的にですがフランス人の「笑い」はアメリカンなコメディよりまだ「日本の笑いに近い」感じがしますね〜。 私はアメリカンな笑いはそこまで好きではありませんがこのリュックベッソン作品の「笑い」はなんだか妙にツボってしまいます笑 この「サブウェイ」から「レオン」までの(個人的に「フィフスエレメント」も加えたい)ベッソン全盛期に撮られた数本はまさに「名作」過ぎるのでご興味がありましたら是非手に取ってみて下さい!「観て損はない」映画だと断言しましょう笑
メインビジュアルが「スターウォーズ」ライトセーバーに見えませんでした(笑)
コメディ要素が中々秀逸なようで、高評価ですね。
日本のコメディは良く見ますが、洋画だと「ハングオーバー」くらいしか知らないのでこの映画も見てみたいです。
私が胸を張って「面白い!」と思えるような、好きなシーンを探します!