ジョーカー(2019)
- ラーチャえだまめ

- 2019年10月6日
- 読了時間: 10分

【原題】Joker
【監督】トッド・フィリップス
【出演】ホアキン・フェニックス ロバート・デ・ニーロ ザジー・ビーツほか
【あらすじ】
孤独で心の優しいアーサー(ホアキン・フェニックス)は、母の「どんなときも笑顔で人々を楽しませなさい」という言葉を心に刻みコメディアンを目指す。ピエロのメイクをして大道芸を披露しながら母を助ける彼は、同じアパートの住人ソフィーにひそかに思いを寄せていた。そして、笑いのある人生は素晴らしいと信じ、底辺からの脱出を試みる。(Yahoo!映画より)
【感想(ネタバレなし)】

『怖い?怖いのはジョーカーじゃない、人間だ。』

“控えめに言って完成度が高すぎる”
先日金曜、ついに日本でもお披露目されました。いやースゴイ。全く座席が取れないのです。先日ハナキンの夜はどこもかしこも満席御礼の嵐。あんだけ宣伝したらそりゃそーなるわな!!“アカデミー賞は確実だ。”いや誰が言ったんだよ!!(笑)まだアメリカでも公開されてねえーよ!!!…と思っていたら“ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞受賞”え、お金払ったら貰えるヤツですか?あそれはモンドセレクションだっt、
そんなわけで見てきたんでございますよ公開から早くも“特大絶賛”されているウワサの【ジョーカー】ってヤツをね!!私ひねくれ者でございましてこうー世間的に人気の高い映画って、例えば某大集合映画とか某魔法使い映画とかどーしても突っつきたくなるんですよ。いやいやそこまでやないやろ、3000回愛すっておま、、、皆軽はずみに言ってんじゃねえよ!!(笑)だからこの映画だってそう、どーせメディアが、DCユニバース低迷に伴って過剰なまでに騒ぎ立ってるだけなんじゃないn

あーこれは今年No1だわ(笑)
“控えめに言って完成度が高すぎる”。上映終了後席を立ちトイレで溢れんばかりの立ちションをしながら真っ先に脳裏に浮かんだ言葉がコレ。なんだなんだ、なんて映画だッ!!(by小峠)いやーこれはちょっとそっとじゃド突く隙間もない、減点する箇所がまるで見当たらない“完璧”とはまさにこの映画の事を言うのではないか!?いやーここまでスゴイとはねー。期待度90%で観に行ったら120%だった的な?今年もまだあと2ヶ月ちょっと残っておりますが、あーもうこれは私の中での2019年度No1映画が早くも確定してしまいました、いやこれを超える“衝撃”はおそらくフォースのチカラを持ってしても今年はもう出てこないのではないか…。そりゃヴェネツィアも唸るわな!!世界が認めてるんだもの!!!これでまだアメリカ絡んでねえんだよ??(公開日は日本と同じ)アメコミが世界で賞……またしても“その時歴史が動いた”誕生しちゃったんじゃねえの…?
ここではもう詳しくは申しません。申しませんがコレだけは言わせてください。本作を観た全ての方々に私は問いたい。本作を観た後も、まだこのジョーカーという男が“理解出来ない狂ったピエロ”にアナタの目には写っていますか?

「ここまで“人間臭いジョーカー”が未だかつていただろうか?」
ジョーカーが怖い?それは違う、ジョーカーが怖いのではない、“人間が怖い”のですよ。彼を見たとき、私には彼が「タクシードライバー」のトラヴィスに見えたし、もっと言うならば「リチャードニクソン暗殺を企てた男」のショーン・ペンが演じたサム・ビックに見えて仕方がなかった。彼らもまた我々と同じ人間である事には何ら変わらない。ジョーカーもそうだ。我々と何ら変わらない一人の人間なのだ。
コレはまさしくガン細胞だ。人間は皆生まれながらにして“ジョーカーのDNA”を持っている。そのDNAが何かの拍子に、例えば風船が割れるみたいにパンッと破裂して発病する。そうすると人は皆ジョーカーになる。そしてこの病は特に低所得者に多い…。
貧富の差が拡大するゴッサムシティ。ジョーカーが闇を生んだのか?闇がジョーカーを生み出したのか?

“笑いながら泣く”ホアキン・フェニックスという俳優。
主演男優賞は彼で確定でしょう。脚本製作時からホアキンをイメージして作られたという、彼がジョーカーに寄せたのではない、ホアキン・フェニックスにむしろジョーカーが寄せたんじゃないかってくらい完璧にジョーカーを“モノにしている”。そして前述した“人間臭い”ジョーカーを見事にやってのけてくれたお陰で「ダークナイト」の故ヒース・レジャー版ジョーカーと畑違いも甚だしい“180度違う”全く新しいジョーカーを誕生させた。彼の演技だけでも1900円払ってお釣りが帰ってきます。
この“凄み”は是非ともIMAXで、IMAXで、アイマアアアアアアアアアックス!!!!(大事な事なので3回言いました笑)体感して頂きたい。ジョーカーという“大量殺人犯”の固定概念が覆るとんでもクライシスな映画。それが「ジョーカー」。
【感想(ネタバレ&解説)】
今作では“バットマンは出ない”とのウワサがありましたが、いやいや出てんじゃん!!まだ幼きブルース・ウェインとしてですけどねッ!!あの屋敷での“出会い”のシーンが個人的に一番「おお!!」と唸ってしまいましたよ!!“彼らの戦いはこれから始まったのだ____。”と勝手に脳内ナレーションしてしまいました(笑)てゆーか今回のアルフレッドゴツくn
「サイン」で異星人にフルスイングしていた彼と同一人物とは思えない名優アホk、ホアキン・フェニックス。兄は故リバー・フェニックス。妻は「ドラゴンタトゥ〜」のルーニー・マーラ。現実ではハーレークインじゃなくてリスベットを選んだようですね!!いやそんなことはどーでもよくって

いやー本当に“凄かった。”
予告で「アーッハッハッハ!!!」って歩きながら笑ってでも廊下の角を曲がった瞬間スッと笑いを止めて真顔になるこの怖さわかる!?あのシーンは「あああああああああホアキンすげえええええええ!!!!!」って彼の“名演技”にドップリ浸れる2時間強!!ジョーカーと言ったらやはり“高笑い”でありますが、今回“発作で笑ってしまう病”という設定にしたことがホアキンにとっての挑戦であり、かつ彼の持つ俳優としての“技量”が存分に披露される結果となりました、“心は泣いているのにカラダは笑っている”こんな演技見たことありますか?えマジ凄くね?並の人間では出来ない“演技”ですよ!?いやー本当に素晴らしかった!!大富豪の息子で両親を殺され執事の名はアルフレッド……という基本的絶対条件が必要なバットマンとは違い、原作でも様々なカタチで登場するジョーカーを主役にしたからこそ出来た、自由の効く“オリジナルシナリオ”の作成。まさかマギカ「ジョーカーとバットマンが兄弟」というトンデモシナリオにも痺れてしまいますけどね!!だからですよね、その発作が災いして周りからは“変な人”呼ばわりされてしまう“心の優しい”売れないコメディアン“アーサー”。今作のジョーカーは先にも言ったようにこれまでシネマに登場したどのジョーカーとも違う“全く新しいジョーカー”なのです。それはつまり

“感情移入”してしまうジョーカーの爆誕。
ヒース・レジャー版ジョーカーと比較しても一目瞭然。ヒース版ジョーカーは“予測不能”全く共感出来ないし歴代ヴィランの中でも特殊能力もない身体的には最も人間らしいのにその中身はヴィラン中最も“人間離れ”している。まさに「人外」なキャラクターでした。
それが今回ホアキン版ジョーカーは全くの逆で“最も人間らしい”キャラクターなんですよね!!作中アーサーに何度も共感してしまった方も決して少なくはないのではないでしょうか??店の看板を不良に壊され、自分の責任ではないのに壊された看板を弁償しろと言われてキレてゴミ溜めに当たったり、小児科病院でピエロの仮想中ポケットから銃が出てきたのだって作中の舞台「ゴッサムシティ」は貧富の差が拡大中で社会に不満を持ったヤバい輩が街中ウヨウヨしていのです。アーサーが自衛の為に片時も離さず所持していたって何ら不思議ではない。彼は悪くない。でも世の中思うように上手くいかない。仕事もクビになり、最愛の母親は病気で倒れ、自分はTVの向こう側で市長選に出馬すると語るゴッサム一の大富豪トーマス・ウェインの息子なのではないか?なんて疑惑まで浮かび上がり、彼の人生はもうメチャクチャですよ!!救ってあげたい、彼を“普通の人間止まり”にしてあげたい!!という気持ち半分それでも“覚醒”する彼も見たい気持ち半分……はぁ本当に人間って(笑)そしてクライマックスが「デットプール2」のザジー・ビーツ演じる同じマンションに住む人妻との恋が全て一方通行の精神病の薬が切れた為起きた“幻想”だったという事。そして人気司会者、ロバート・デ・ニーロ演じる名司会者マレー・フランクリンに自分の笑いを馬鹿にされたという事___。これはかなり精神的にキツかったですね…。全く救われない。もはや誰も味方がいない。孤独。もう失うものもない。。。。。

そんなジョーカーになるまでが意外と短かった?いや作中明確に「ココからがジョーカーですよ」と描いているわけではありません。それは監督のトッド・フィリップスもあえて明確に線引しなかったそうです。そーそーそのトッド・フィリップス監督ですよ!!トッド・フィリップスと言えばあのおバカ映画「ハングオーバー!」シリーズを手がけた確信犯ですよ!?“コメディ監督”がDCで超絶サイコパスな「ジョーカー」映画を撮る??はじめ聞いた時は一体なんの“ギャグ”だよって思いましたよ!!いや作風的にも絶対合わないって!!そう思ったのは私だけではないはず!?
そしたらトッド・フィリップス✕「ジョーカー」✕ホアキン・フェニックス=奇跡のケミストリーしちゃうんだもんなー!!!だから本当にスゴイと思うんだよなー!!トッド・フィリップス(何回言うねん笑)今後彼の知名度がこれまで以上に伸びるのは言うまでもありません。そんな全く場違い感半端ない「ハングオーバー」の監督……否!?その「ハングオーバー」と今作との“共通点”ってなんでしょう??
個人的な意見ですが私「ハングオーバー」見てあんまり“笑えなかった”のです。ちょっと“やり過ぎ”っていうか、この人の笑いってたぶん万人受けするような笑いじゃないと思うのです。少なくともネズミーMOVIEにある笑いとは全く違うと言うか……言い方悪いですがちょっと“トゲのある”感じ?……んこれってまんま本作にも同じことが言えないか?たまたま不運な運命を生きることになったアーサーが追い込まれ追い込まれ、追い込まれ続けたが故に“落ちるところまで落ちてしまった”その結果が“ジョーカー誕生”につながるわけですよね?本作がR指定で決して万人向けにそもそも作られていないのも納得で、トッド・フィリップス監督的にはその“落ちるところまで落ちてしまった”人間をとことん描ききってやろう、そしてその“結果”も包み隠さずはっきりと見せてやろう!!そーゆー意味では前作にもとても通じるところがあるのではないか。

しかも人を笑わせる事って相当“人間の事をよく知っていないと”出来ないと思うのです。だって意図的に笑わせなければいけないわけですから。これはコメディアンのジョーダン・ピール監督にも言えると思うのですが、コメディアンやコメディの製作者ってそんな人間をよく観察して熟知するのに長けている、よく理解してらっしゃる、つまり“人間の本質を描くのも上手い”。本作を見て返って彼の“作風”がなんとなく理解出来ました。
アメリカでは「ダークナイトライジング」公開時に起きた銃乱射事件を踏まえ、本作の公開を危険視する声も上がっているそうです。確かに私個人の意見としましては、そのような“影響を受けてしまう”人が生まれる可能性もゼロではないと思ってしまいます。しかし今作がそんな犯罪を助長するだとか、アナーキスト万歳するような映画だとは全く思いませんし、貧富の差という日本だけではない問題をテーマにしている作品ですが意図的に反乱を促すような事も私はしていないと思うのです。ジョーカーはある者には恐怖の存在として目に映り、またある者には革命家、ヒーローとして映る。同じ街に住んでいるのに。これっておかしいですか?まさに笑えない世界。映画の見方は人それぞれだと思います。ジョーカーの誕生は可能性の一つに過ぎないと思います。誰でも彼のようになるわけではない。ただその可能性はある。そう言いたいのではないか。

ところで作中ジョーカー=アーサーが“本当に笑っている”シーンの実に“少ない”事か…。その多くは発作と“愛想笑い”その数少ない彼の“本当にニヤッと笑う”シーンの一つが、あのクライマックスの犯罪者達の前で踊るシーンなのがまた切ない…。




コメント