ダーク・アンド・ウィケッド(2020)
- ラーチャえだまめ

- 2021年12月27日
- 読了時間: 6分

【原題】The Dark and the Wicked
【監督】ブライアン・ベルチノ
【出演】マリン・アイアランド マイケル・アボット・ジュニア エラ・バレンタインほか
【あらすじ】
農場を営むテキサスの実家から離れ、別々に暮らすルイーズ(マリン・アイルランド)とマイケル(マイケル・アボット・Jr)の姉弟。病身の父親の状態が良くないと聞かされた彼らは、長らく帰っていなかった実家を訪れる。最期を迎えようとする父親を見守っていた母親は、二人の姿を目にするや「来るなと言ったのに」と突き放したような態度を取り、その晩首をつって死ぬ。そのことをきっかけに、姉弟に恐ろしい出来事が次々と降り掛かる。(Yahoo!映画より)
【感想(ネタバレなし)】

『正月に実家帰って傷ついたセリフNo1』
どーもどーも引っ越し早々週1ペースで実家に帰っているラーチャえだまめです。一人暮らしってマジでサバイバルじゃないですか?その上で“食料調達”っていうのはですね、非常に重要になってくるわけですよ?まぁ家に帰ることが最大の親孝行と思えば一石2丁拳銃……しかし世の中には死にかけの父親の最期を看取るために帰ってきたというのに「帰ってくるなと言ったのに」と母親に迷惑がられてしまうご家庭もあるんですね。
【ダーク・アンド・ウィケッド】!!!いやー“大量のヤギの死骸”が写ったポスターがなんとなくキングの小説カバーっぽいって?いやいや全然違いますよ。“アメリカの田舎の農園”で起こった“邪悪な存在の犯行”とは___てやっぱりキングやないかーい。とも思いたくなる?都心じゃなくて田舎って言うところがさ……いいよね。乙よね。ちなみに私は根っからの「SIREN」信者です

しかも監督がブライアン・ベルチノと知ったからにゃあ、これは是非見に行かなくては……!!え、誰やねんって?ヒュートラ渋谷で毎年恒例世界各国から集められた“ゲテとの遭遇マーケット”「未体験ゾーン」で出会ったドB級ながらアル中ダメママとその娘のお涙チョチョぎれ家族愛に何度も心打ちのめされその後しれっと出てきた森の珍獣さんの存在意義が全く効果を成していなかった「ザ・モンスター」という映画がその年のマイ・ベスト・オブ・ゲテに勝手に優勝してしまった(そのあとDVD買っちゃったもんね!ただすべての人にはオススメはしないよ!)ちなみに「ストレンジャーズ/戦慄の訪問者」の監督と言ったほうがしっくりくる方もおるやもしれません。その「ストレンジャーズ〜」でオヤジさんもハルマゲドン歌ってる場合じゃねえリブ・タイラーが覆面サイコパス集団にひたすらにドイヒーな扱いを受ける“だけ”の「全く救われないEND」がある意味衝撃的だった、そんな人の子か一瞬疑ってしまうデビュー作から“悪魔のような性格”を露見させたブライアン・ベルチノ監督が?“「ストレンジャーズ〜」の惨劇再び”と謳い文句がつきそうな

“全く救われないジャパニーズ「呪怨」スタイル”
のホラー映画を爆誕させてしまったんですねー。
重篤の父を看病する母が暮らす、とあるアメリカの田舎のヤギ農園に父を看取るためにおひさしブリーフに帰郷してきた姉弟。元気にしてるかな?なんて母の様子まで気にかけていたというのに会っても全然口を開いてくれない母。それどころか一言「今すぐここから立ち去れ−い!!」と美輪明宏ボイス並に姉弟を避け続ける母。ワーイアメリカンマザーハハーン??父の世話を押し付けたツケでもあるのかな。四六時中世話し続けてきっと疲労困憊っていうのもあるのだろう。なんて思っていたら

美しくも残酷な今作イチのカット
たぶんこのシーンに一番チカラ注いだんじゃないかな?朝突然消息を絶った母を「マザー!」と叫びながら家の外に出て探す姉弟→からの「メェ〜」と聞こえるいつもと変わらぬヤギ小屋→からのそこで首を吊った母の後ろ姿……を徐々に引きながらワンカット。カチッと完璧に演出が決まっているというか、いやーいいですねぇ。これぞ悲劇と地獄のランデブー??そしてこの“母の自殺”からこの物語の“悲劇”はさらに加速することになるのです。母を長年苦しめてきた“ソレ”が、今度はその娘・息子たちにまで手を伸ばし始めて……。

なんと言うか直接的にビビらせる系ではない、どちらかと言うとJホラーに近い雰囲気なんですよね。生前母が一人で台所で調理中に後ろから物音がして“ソレ”の気配を感じ……高速ターン!!!からのダーン!!!ではなく「やり過ごそうとする恐怖」気にしない気にしない〜落ち着け落ち着けポーツマツポーツマス……いやいやでも確実に背後に誰かおるやん?という忍び込む怖さがまたいいんですよね。まあ“ソレ”の正体とかですね、まぁタイトルに「ウィキッド」って書いてあるんでもう8割型アイツやろってバレバレな気もしますが今売れに売れまくりのジョイ!嬢が一躍脚光の的となったロバート・エガース監督の「ウィッチ」に非常に酷似……ん″ん″ん″ん!!今何か言いました?非常に雰囲気が似ているというかウォーレン夫妻の理念と真っ向から対立する

人間は“ソレ”の前ではひらすらに「非力」。
何故“ソレ”につきまとわれるのか?その理由が全くわからないのです。何か恨まれるようなことした?無神論者だから?お彼岸に墓参りし忘れたから?そもそも“ソレ”にそんな「狙われる理由」を聞く方がお門違いな話ではないか?“ソレ”とは我々の人知を超えた存在であり、従って「理由」などそもそもないのかもしれない?
だから人は“ソレ”を恐れるのではないか?「意味もなく地獄を味合わされる」これほど恐ろしく悲劇なんてありませんよ!?この映画に偶然近所の住人がライフル持って助けにくるとかなぜか物理攻撃で倒せちゃうとか街の神父が何故か封印の呪文知っててその上めちゃくちゃ強いとかそんな「奇跡」は何一つ起こりません。たとえどんな強い姉弟の絆だろうと「恐怖」を前に片方が怖気付き家族の絆がプツンと切れる、実にリアリティ。現実は小説より残酷なり?人間は恐怖を前にするとたとえ身内を裏切ってでも助かろうとする、それが人間の性だああああ!!

そう、だからこの映画には「救い」がないのです。悪魔のせいでも有罪かよ!!でも命だけは見逃してくれた「死霊館」なんて甘っちょろいわ!!「本当の恐怖」とはそれ即ち「一切の救いのないまま落ちるところまで落ちる」ではないでしょうか?だからこその「END」にとてつもない違和感を覚えてしまうのです。いやたしかにシナリオ的に起承転結のケツの穴がないではないか!!これは「映画」としてどうなんだ??そう思うかもしれません。
とっても「反映画的」だと感じてしまうくらい、遡ればルチオ・フルチ◯の「ビヨンド」だって最後は無事地獄に到着してめでたしめでたしで救いなんてなかったじゃないか!?我々はすっかり「救いありきのホラー」に親しみすぎてしまった……本作を何も知らずにデートMOVIEとして足を運んだカップルの実に「救いのない結果」は言うまでもなく「恐怖」だけをひたすら突き抜けると?「映画」としては詰まらないものに成り下がることをも意味しているような、そんな気もしました……。




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