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チワワは見ていた ポルノ女優と未亡人の秘密(2012)


【原題】Starlet

【監督】ショーン・ベイカー

【出演】ドリー・ヘミングウェイ ベセドカ・ジョンソン ステラ・メイブステラ・メイブほか

【あらすじ】

女優を目指しながらポルノ女優として働くジェーンは、愛犬のチワワや同業の友人メリッサらと一緒に暮らしていた。ある日、ガレージセールでポットを購入した彼女は、その中から1万ドルもの札束を発見する。ジェーンは売主の老女セイディのもとへお金を返しに行くが、ポットを返品しに来たと勘違いされて門前払いされてしまう。困ったジェーンは偶然を装ってセイディに近づき、買い物の送迎をしたり一緒にビンゴゲームに出かけたりするようになるが……。



【感想(ネタバレなし)】

『どうでしょうか』






どーもどーも歯医者で自分の歯を褒められた時以上に嬉しいことはありませんラーチャえだまめです。早速ではございますが本日も早速こんな映画を拝見させて頂きました



【チワワは見ていた ポルノ女優と未亡人の秘密】……デーデーデー!!!デーデーデー!!!あれ今日は火曜日でしたっけ「家政婦は見た」的な?(いや全然違う)チワワと言ったらビバリーヒルズかパークマンサーが溺愛してるくらいしか個人的に馴染みがない原題はそのチワワの名前“Starlet”とこれまた全然違うタイト……「ポルノ女優と未亡人の秘密」なーにハリーポッターと秘密の部屋みたいなタイトル勝手につけてんだよチックショ………そんな不純な動機120%で見たのではないショーン・ベイカー!!!いやー私大好きな監督であります全編iPhone5sで撮られた異色の映画「タンジェリン」でマインドを掴まれ続くアカデミー&ゴールデングローブ賞(助演男優賞)にもノミネートされた神奈川ではこれが“たまプラーザプロジェクト”かもしれない「フロリダ・プロジェクト」でもう完膚なきまでに感無量のケチョンケチョン!!にされてしまいまして……そんなショーン・ベイカー監督の過去作を今回見つけたので拝見させて頂きましたってワケ



いやーショーン・ベイカー監督と言えばその最大の特徴としてスタジオがあってカメラがあってその前に役者を立たせてはーいカット……ではない“その場にいる自然体の役者にカメラを向ける”ようなまるで「ドキュメンタリー」映画のような??最近そういえばデイミアン・チャゼル監督がiPhone用の映画を作ってましたけどね、一般的にiPhoneカメラというフィクションの世界ではない我々のいる“日常の世界”を映し出す際に使われるカメラ、で映画を撮ることで“リアル”な映像と世界を構築。「フロリダ・プロジェクト」ではリアルな演出が特に顕著に現れておりました、また“俳優ではなく一般人を起用する”というこれまた独特な方法を使うなど、とにかく「リアルさ」に並々ならぬこだわりと定評がある……ゆえに今作もそのような方向性で撮られているのかなー、なんて思っていたのですが……これがものの見事に






















御名答です。









しかもまたまた今作も“名言”連発のインディーズ作品ながら非常にオヌヌメしたいひゅ、ヒューマンだなぁ〜、とってもナイスですねぇ〜なドラマが展開されてしまうのであります……。





ある日突然大金を拾ったら、貰っちゃう?or貰っちゃう?





女優を夢見るもその道は遠く下積み時代を謳歌中の若者ジェーン。今はポルノ女優として生計を立てつつ仕事仲間とシェアハウスをして暮らしております。ある日フリマをする老婆から年期の入った壺を購入した所その壺の中から出るわ出るわ札束の嵐!?その額ざっと1万ドル!!いきなりの大金を手にしたジェーン。はじめは目先の大金に思わず目がくらむもすぐに理性が働き壺を購入した老婆に事情を話し“返品”を試みます。しかし「返品お断り」の一点張りで老婆からは全く相手にされず……とりあえず厚底ブーツの中に隠すジェーン。同居人達にはバレていない。このまま一人で大金持ちにでもなろうかしら?しかしジェーンはふと考えた。「こんな大金貰っちゃってホントにいいのだろうか?」なかなか罪悪感が消えないジェーンはふと同居人のメリッサに口を漏らす「大金を拾ったらアナタならどうする??」一瞬「え?」と疑われるも返ってきた答えは「相手次第じゃない?」



こうして翌日からジェーンの突拍子すぎる計画その名も「老婆補完計画」が始まったのである_____。



いやーまたしても全体的にドキュメンタリーちっくな撮り方してまんがな〜。バックBGMの心地よさも相まってやっぱりこの監督はセンスがいいっすね〜。何の因果かボンビーガールのもとに突如舞い込んできた大金。偶然“拾った”だけですし?私ならそのまま、まぁそんな大金いきなり銀行に預金して行政から目でもつけられたら嫌なんでやっぱりそうですねー、厚底ブーツの中にでも隠しとくかな(拾ったものは俺のもの)しかしそのままガッツリ盗んで……しまっては何のドラマも生まれないワケで同居人に言われた「相手次第」という考え方。トイレットペーパーの代わりに札でお尻ふけるくらいの“お金持ち”なら?そのまま貰ってもいいでしょー。それとも大家族で生活費がカッツカツに困っている家庭ならば?やっぱり悪いので返そう…。では壺の売り主である老婆は……?ということでジェーンはその老婆セイディーを“ストーキング”するようになるんですねー。偶然を装い「あらこの前の……ご機嫌麗しゅう〜」とセイディーの前に現れセイディーが呼んであってタクシーを勝手に帰らせ無理やり自分の車に乗せて強引に家まで送迎、またセイディーのビンゴ大会にも顔を出し「あらあらまたこの前の……ご機嫌麗しゅう〜」と勝手に隣に座りセイディーのビンゴの妨害をする













































そりゃ…やり方がね、だって明らかに詐欺師の近づき方のソレですからね?完全に怪しい娘となってしまうジェーンでありましたが、、、、その後なんとかセイディーの誤解を解くことに成功したジェーンはセイディーとの間に徐々にではありますが“キズナ”のようなものが生まれてくるのですが





“友情”に年の差なんて関係NOTHING…





なんでしょうこのジェーンとセイディーの関係性。親子以上に歳の離れた端から見れば完全に“祖母と孫”なんですけどね。この2人の間にはそんな親子のような関係……でもあり“歳の離れすぎた友達”のような、そう言った方がしっくりくるかもしれません。



セイディーはまぁ、言ってしまえばカワイイ頑固ばあちゃんなんでありまして、現在大きな庭完備の一軒家に一人暮らし、ほかに家族もおらず口数も少ないし歳の近い友達も作らずビンゴ大会でも周りと距離を取りながら一人孤独に楽しむ日々。そこへ陽気で誰とでも仲良くなれるタイプのキャピキャピギャルのジェーンがセイディーがはるATフィールドを初対面からいきなりぶち壊しにくるわけですよ!?アンタばかぁ〜!?と初めは拒絶反応をしめすセイディー、しかしなんだか彼女と一緒にいると“楽しい”。80過ぎのおばあちゃんが「新しい友達を作って人生の輝きをちょっとずつ取り戻していく」なーんて素晴らしい話なんでしょう。なかなか高齢になってから新しい出会いを探す、新しいことに挑戦するなんて出来ませんよねー。まぁセイディーの場合“巻き込まれた”だけではありますが



そしてジェーンもジェーンで何十年も生きてきた人生のパイセンであるセイディーから数々の“教え”を聞かされるわけですよ。たとえばそうですね……



















ぐうの音も出ない


















ぐうの音も出ないPART2





















FPSで「孫子」を語るぐうの音が鳴る











ジェーンを演じるのは「誰がために鐘は鳴る」「日はまた昇る」などで知られるアメリカの文豪作家アーネスト・ヘミングウェイのひ孫でモデルのドリー・ヘミングウェイ。ほかにも「イット」のMr.ゲジマユゲことジェームズ・ランソンが後の「タンジェリン」でもベイカー監督とタッグを組んでいますよね。



セイディーには昔夫がいたことが判明します。しかし夫は数十年前に病気で他界しギャンブル好きの夫が溜め込んだ大金で今は生活しているという。そうかそうかだからセイディーはこんなに大金を持っていたのか……ただ夫を亡くした哀しみを数十年経った今でもどこか引きずっていた。そしていつしか他人との関わり合いを避けるようになっていた。それを知ったジェーンはセイディーの長年の夢である“パリ旅行”を計画する…。ラストで「えッ」となる事の真相が唐突に明かされてそこでEND……まさに「フロリダ・プロジェクト」の“夢のラスト”を彷彿とさせる。いやーまたしてもディズニーマジッ……あいやベイカーマジックとでも言うのでしょうか!?ラスト数分で“魅せる”これまた素晴らしい幕引きだと思いましたねッ!!





ショーン・ベイカー監督の描く「リアル」とは





今作でもやはり「社会的に立場の弱い者」を描いていたショーン・ベイカー監督。今作は「タンジェリン」「フロリダ・プロジェクト」より前に撮られた作品ではありますが一貫しているなぁーと思ったのは「格差社会」とそこに生きる者たちを「ありのままに写し、そしてありのままを受け入れる」という姿勢___。



開いたら口が止まらない爆笑必須のオネエたちの織りなすしゃべくりTVこと「タンジェリン」ではコメディ要素フルスロットルながらもその背景にあるのはトランスジェンダーの主人公たちが社会で受ける冷ややかな目、“偏見”というものでした。「フロリダ・プロジェクト」では親の貧困問題によるネグレクトに教育問題が背景にあった。そんな「格差社会」という超現実的な問題を作品のテーマに組み込んできたベイカー監督にとって作品の「リアリティ」とは、ある意味なくてはならない要素なのかもしれません。



そして今作ではポルノ業界に生きる女性という、これまた社会的に“立場の弱い”者を描いた映画なんですね。そして彼らの生き様を「ありのまま」に見せる。「フロリダ〜」ではアイスクリームを買うお金がないから店員を騙して恵んでもらう子供たち、ヤクの取引所だった廃墟が子供たちの遊び場になっているという“実情”を映し出しました。今作でも劇中いきなりリアルAVが始まった時はおもわずスピーカーの音量を“小”にしてしまいましたがそれも「ありのまま」を見せるという意味では?入れないワケにはいかなかったのかもしれません。そこにも監督のこだわりがあったのではないでしょうか。



そして彼らがその社会で懸命に力強く生きている、ということが「ありのまま」を映し出すことで見えてくる。世間など気にせずただ毎日を全力に楽しく生きる子供たちのたくましき生命力、そのヤンママだってその日暮らしだろうが貧乏に屈しず懸命に生きている。今作のジェーンも誰とも壁を作らない強さを持ち周りのスタッフに嫌な顔一つ見せずに仕事をこなす姿はプロフェッショナルそのもの。仕事柄恋愛はご法度でも仕事だからと割り切って生きている、女性としてのたくましさを感じることが出来ました。そして視聴者はそんな彼らの生き様に勇気や元気をもらえるのです。



「ありのままを受け入れる」。監督は作品を通して彼らを肯定も否定もしていません。そのありのままの姿カタチで「ただ受け入れる」ことを貫いているように見えます。街中でギャーギャー騒ぎ立てるオネエたちを「受け入れる。」安モーテルに住みモーテル内で鬼子ごっこをしながらただ楽しそうに遊ぶ子供たちを「受け入れる。」ついでにヤンママたちも「受け入れる。」そして本作では、それがセイディーがジェーンに心を開いていく、セイディーがジェーンを「受け入れる。」ということに繋がってくるのではないか?いやーショーン・ベイカー監督の今後の活躍にますます期待が膨らんでしまう、本作で彼の才能がまたしても“確信”に変わってしまう、ファンならずしもオヌヌメです。







【感想(ネタバレ)】




序盤で大金を手にしたジェーンが母親に旅費を出すから会いに来ないかと電話しますが断られてましたよね。お金があっても会いに来ない母親、とはあまり上手くいっていないようでした。ジェーンがポルノ業界で働いていることすら知らなさそうだし。ジェーンにとってセイディーは歳の離れた友人でもあり、そして母親のような存在でもあった。だからこそラストで判明する事実、セイディーには実は昔娘がいて他界していた事実を知り思わず言葉を失う。実は墓石に記された年表から夫の死よりも前に娘さんが亡くなっていることがわかります。つまりギャンブル好きだったとセイディーが言った夫の死が、もしかしたら娘の死とリンクしている可能性も?娘の死を哀しみ自らも身を投げた……とは考えられないだろうか?



ジェーンの愛犬スターレットがセイディーの自宅から脱走する場面、結局スターレットは見つかりますがセイディーはスターレットが脱走した事にえらく心をいためてしまいます。スターレットはジェーンにとって娘(♂)同然の存在。そのスターレットがもしいなくなれば母親のジェーンはひどく悲しむことでしょう。その姿が娘を失った自分と重なったのでしょうか、その悲しみは“愛する者を失った”人ならばもう二度と味わいたくないものだった、だからセイディーはジェーンと距離を置こうとしたんじゃないかなー。



結局最後までジェーンは大金のことをセイディーに伝えることはありませんでした。その件でメリッサがセイディーのもとを訪れ「彼女は嘘つきだ」と避難しましたが、確かに見ているコッチとしてもジェーンがちゃんと伝えていないことにはモヤモヤが残る感じではあります。でも事実を知った上でジェーンを「受け入れた」セイディーとの関係性は、きっとパリに行った後も変わることはないのではないでしょうか??私としてはパリから帰った後も2人の良好な関係は続くと思います。いや家を追い出されのがフラグとなって共に暮らす未来まで私には見えましたね。そんな事をふと想像さえしたくなる、こういう映画を“物語がいつまでも生き続ける映画”って言うのかもしれませんね…。




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