パラダイム(1987)
- ラーチャえだまめ

- 2021年3月23日
- 読了時間: 7分

【原題】Prince of Darkness
【監督】ジョン・カーペンター
【出演】ドナルド・プレザンス ブライアン・マーシュ ヴィクター・ウォンほか
【あらすじ】
ロサンゼルスのとある廃墟と化した教会。その扉を開けた一人の老司教はそこに不気味な緑の液体を発見。悪魔の復活を予感した彼は超常現象の研究を進める教授ほか数名の研究員と共に教会に乗り込み調査を開始する……。(Yahoo!映画より)
【感想】

『序盤で脱落するかと思ったら何気に「あれ、お前まだ生きてたん?」ってなる件』
どーもどーもその昔友人が洗面所でアルミノのワックスを使っていたので「ルマルシャンの箱かよ!」と突っ込んだら無言で返されましたラーチャえだまめです。早速ではありますが本日はコチラの映画を拝見させて頂きましたー
【パラダイム】……!!!いやー出ました我らがカーペンターおじさんことジョン・カーペンター!!!もう大学時代にハシ゛メマ゛シ゛テ゛ェーしてから一時期めちゃくちゃこの人の映画を手当り次第に観た記憶があります。「遊星からの物体X」が生涯のベスト映画になりました「クリスティーン」で“愛車に溺愛しても嫉妬はされるな”……良い教訓になりましたねアメリカに行って“マイケルマイヤーズの家”の前まで来て閉園日であることを知り絶望したっけな「ゼイリブ」でいい年したオッサン二人がグラサンかけるかかけないかで揉めたあの10分間は一体なんだったんだろうてか火星人の怨霊ってなんだよ……
そんなジョン・カーペンター作品をこよなく愛すもこれまで撮られた作品は数多くお恥ずかしながら未だ全作を観れていないのですが、先日何の因果か未見のコチラを観ることになりまして……過去に再ソフト化されたのは知っていたのですが、いやーもっと早く見ればよかったなー、と若干の後悔の念に駆られてしまいました。いやぁねぇ?ただの昭和歌謡臭アリストテレスなオカルト映画だと思ったんですよ、それがまさかマギカあのクリストファー・ノーランより何十年も前に鉄板のフィクションネタに“物理学の応用”を適用させちゃったという、とんでもクライシスな掛け合わせを実践していたという

悪魔を“物理学”を使い証明しようとした
もう小難しいのなんのって!?そんじゃそこらの中身ナイチンゲールなオカルト映画とは次元が違う!?ケッコーな凄いことをやっていた映画、だったんですねー。
■OPから「何が起こっているのかわからない、けどとにかくヤベェことがこれから起きそうな予感」感がすごい
ロサンゼルスのとあるカトリック協会を長らく収めてきた神父が死んだ___。牧師の死後、協会を訪れた地元の司祭が協会の地下に足を踏み入れてみると、そこにあったのは緑色の液体が床屋の看板並にグルングルン回る謎のシリンダーだった…!!?
床屋の看板並にグルングルンいわしちゃってますから!?こりゃータダゴトじゃねえと察した司祭はこの謎の解明に乗り出した。「あれ、ベストなキッドの師匠ですか?」とときどき間違えられそうな大学で量子物理学を研究する一人の教授に協力を依頼。彼は床屋の看板並にグルングルンいわしちゃってるシリンダーにただならぬ恐怖を覚え、これはどげんがせんといかんと、自慢の教え子たちを「お前ら参加しないと落第させます」と脅し大学から頂戴した無数の機械と共に三日三晩協会に監禁しシリンダーの解明に乗り出す……

「ただならぬ空気感」____。カーペンター作品お得意の“シンセなBGM”と共に始まるOP。「ハロウィン」のドナルド・プレザンスと「ゴーストハンターズ」のヴィクター・ウォンの常連さん2人が演じる司祭と教授がなにやら我々には“聞こえない会話”をしながら着々と“計画”を進めております。「ただならぬ空気感」……我々には「何が起こっているのかわからない、けどとにかくヤベェことがこれから起きそうな予感」だけがジワジワと醸し出される……ワクワクと恐怖の入り交じる感じ?いやー堪りませんよねー。OPで雪原を駆け巡る一匹のイヌをヘリコプターで追いかけるスナイパー、という異常事態をただ淡々と見せつけてくる「物体X」と同様「緊迫感」を本作でも感じることが出来るかと思います。これがカーペンターの真骨頂。そして昼過ぎに観ると猛烈な睡魔に襲われる真骨頂
教授の鶴の一声で続々と集められる研究者たち。彼らも何故集められたのか、これから一体何を研究するのか“一切知らされていない”我々視聴者と同じ立場のヒューマンなんですよねー。唯一知っているのは司祭と教授のみ。性別も年齢も異なる数人の研究者たちがこの世のモノとは思えぬ摩訶不思議なシリンダーの調査に乗り出します。それと同時に外では何やらホームレスの群れがまるでアヤカシに操られているかの如く協会の前に集まってくるわ、壁についた窓にはビッシリと大量のミミズが群がり空を見上げればもうじき皆既日食でも起こりそうな……こんな時ハン・ソロがいたらきっとこう言うことでしょう「嫌な予感がする…。」と。
そんな序盤〜中盤までのミステリーな展開が、なんともいいといいますか、一気に作品に引き込まれてしまいましたねー

立った!クララが立った!!
一人、また一人と“謎の存在のチカラ”によりお空にマンマミーヤしてしまう研究員たち。全身虫塗れに首チョンパ……グロさは十二分によし。いつしか彼らは自分たちが気づきもしない内に“協会に閉じ込めまれていた”という流れ。「要塞警察」や「物体X」に通じる“数人が外界から閉ざされた空間で悪戦苦闘する”これもまたカーペンター作品お決まりと言ったところでしょうか??てもうすでに研究者の一人が緑色の液体飲み込んじゃってただのデクノボウになっちゃったよー!!恐怖は外からではなく“内側から感染する……。”監禁モノの面白さを体験出来る。一体これから何が起こるというのか!?見えない謎のチカラの正体とは……!?
■悪魔を“物理学”を使い証明→よくわからんくなった

いやーとにかくよくわからん。悪魔がなんだキリストがなんだ、それに加えて粒子学がなんだでゴッチャになってくるからもうわからん!!!完全に初見殺しもいいとこどっこいな、これはかなり南海トラフも絶句するレベルの難解映画なんじゃないですかねー。先ほども書きました「悪魔を物理学を使って証明」……大学で物理学を専攻していたカーペンター監督が挑み導き出した“一つの仮説”といいますか、それがまたまたぶっ飛んだ内容のものでたとえば宇宙からきたツタンカーメンもビックリな“キリストは宇宙人でした”とか、我々が先祖代々頼みの綱としてきたオレ様神様は実は“超絶ブラック企業のシャッチョサンだった”というとんでもクライシスな“新説”がバンバン出てくるわけです。しかもそれがもう実に抽象的な解説のなんの、もうちょっとバカでもわかる説明してくれません司祭?なんか難しいこと言って自分に酔ってません司祭?いやーここまでネチネチな理屈映画とは思いもしませんでした。
電波塔となり夢の中で何者かからのメッセージを送受信するシーンが印象的でしたね。それもまたタキオンがどーたらこーたらで(以下略)未来から過去へ電波を送ることができるらしい…。そんな「テネット」顔負けな高難易度な“空想科学映画”としての色合いが強い本作、よくよく考えるとトンデモ理論なのを難しい用語を多様してどことなくそれっぽく、妙に“説得力”のある感じに仕上げている所なんかもノーランのソレに似ていてノーランファンには意外とフィーリングが合うかもしれませんよ?しかし一方でまーたこの手の深読み好きな人が難しいワード連発しながら一般ピーポーより一段高い足場の上で我々を見下ろすネタとして使いたがる作品だなーと、必ずしも理屈っぽく解釈するのが正しいとは思わないし私からすればそこから一気にギャグ映画と化す後半戦がむしろ面白いのなんのって

思えば「ちょっとコーヒーでも飲まない?」とか言って同じクラスの研究員の女性を誘ったトランプのマジックが趣味のいかにも頭の出来が良さそうな紳士ヒゲを蓄えた男が次のシーンでその女性と裸でベットインしている時点で「ん?」と素直に疑問を持てばよかったんですよ!!口から水鉄砲を噴射するしか能がない悪魔の使いの回りくどいやり方もなんのその、前半あれだけ緊迫した空気を演出していたというのにアクションシーンの手間を省きたいからといって現役のプロレスラーを主演にした軽いノリの「ゼイリブ」やなんでもアリーナの「ゴースト・オブ・マーズ」、さらにはラストに宇宙空間でサーフィンしてエンディングを迎えるという前代未聞の「ダーク・スター」等で見られる“気の抜けた炭酸みたいな笑い”が何故か後半に入ってからジワッと染み込んでくるといいますか









撃沈!!!

いやナニを繰り出そうとしてんのよ
かつてファンデーションの鏡に発狂する悪魔がいただろうか…?ニベアクリーム塗り忘れて顔面アカギレ過ぎる独特な悪魔降臨からの、それでもラストはちょっぴり切ない感じにはなりますが……これは何度もリピートしがいのあるスルメ映画かもしれません。実際初見では理解しにくい作品ですからね、神とは?善と悪とは…?そんな哲学的な要素も練り込まれたなかなか一筋縄ではいかない面白さ、オヌヌメです。




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